歴史的な邸宅を借り切り、高級な天ぷら料理で国際オリンピック委員会(IOC)委員をもてなす-。徹底した取材と生々しい描写で知られる英ジャーナリスト、アンドリュー・ジェニングス氏が今月8日、78歳で死去した。1991年の共著「オリンピックの貴族たち」(邦訳版『黒い輪』)は、金品飛び交う五輪招致や巨大スポンサー企業との癒着を暴露し、その後のIOC批判の発端となった。
IOCの特殊性は、昨夏の東京五輪の際、組織委員会で勤務した元職員の男性(30代)も感じたという。高級ホテルでの宿泊や貴賓席での開会式見学など、待遇はIOC委員ら「五輪ファミリー」が最高位。各国の五輪委幹部らが続き、スポーツ相など各国閣僚は〝十把ひとからげ〟だった。
「通常の(外交)感覚と全く逆の世界」。元職員は驚くばかりだったという。実際、コロナ対策で直前に出席者が制限された開会式には、台湾の五輪委幹部が出席する一方、台湾のIT担当閣僚、唐鳳(オードリー・タン)氏は出席見合わせを余儀なくされた。