ソロモンの頭巾

長辻象平 新鋭原発・高温ガス炉 「大事故は起き得ない」証明へ

HTTRの格納容器内の最下部の様子(広角レンズを使用。長辻象平撮影)
HTTRの格納容器内の最下部の様子(広角レンズを使用。長辻象平撮影)

次世代原発として注目度の高い日本の高温ガス炉の画期的な安全性が世界に示される―。

日本原子力研究開発機構は1月下旬、経済協力開発機構の原子力機関(OECD/NEA)と共同で、同機構の高温工学試験研究炉「HTTR」(茨城県大洗町、熱出力3万キロワット)の安全性実証試験を行う。

HTTRは世界最高性能の高温ガス炉。稼働中に全電源喪失に遭っても運転員の操作なしに自然に停止して、炉心溶融などの事故には至らないことを実機での試験で立証する。

脱炭素の切り札

「ガス炉」の3文字で火力発電と混同されかねないが、高温ガス炉は正真正銘の次世代原子炉だ


高温ガス炉は、ウラン燃料の核分裂反応を起きやすくする「減速材」に黒鉛を、核分裂で生じた熱を取り出す「冷却材」にヘリウムガスを使う。

通常の原発用の軽水炉では、減速材も冷却材も普通の水(軽水)なのだ。

軽水炉で発電に使われるのは約300度の水蒸気だが、高温ガス炉ではヘリウムガスが約千度に達し、熱効率が高いガスタービン発電を行い、同時に水素を製造する。脱炭素の水素製鉄にも道を開く。

工業用の熱源や地域暖房の熱源にも使えるのが高温ガス炉の特徴だ。

こうした性能面での優位性とともに高温ガス炉の存在を際立たせるのが「安全性の高さ」である。

重大事故と無縁

福島第1原発では全電源喪失で炉心が溶融。周辺地域が放射能で汚染されたが高温ガス炉ではそうした重大事故は原理上、発生しない


HTTRの燃料に使われている直径1ミリの燃料粒子はセラミックスで被覆されていて1600度の熱に耐える。4層構造の燃料粒子は内部の放射能をしっかり閉じ込め外に出さない。

炉心を構成している黒鉛は熱容量が大きい。異常が起きても炉心の温度上昇は緩やかで、その熱は原子炉容器の表面から余裕を持って外部に放熱される。

また、冷却材のヘリウムは不活性なので事故時にも軽水炉のような可燃ガスを発生させる化学反応は起こらない。

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