ソロモンの頭巾

長辻象平 新鋭原発・高温ガス炉 「大事故は起き得ない」証明へ

固有の安全性で

高温ガス炉は「固有の安全性」を備えている。だから重大事故とは無縁の原子炉なのだ


固有の安全性とは危険な状態が生じても外部からの操作なしに、システム自体に備わる物理的なメカニズムで異常を抑制する機能のことだ。

例えばウラン燃料には、異常な高温になると核分裂反応が停止に向かう性質が備わっており、これも固有の安全性の一例。

だから高温ガス炉ではヘリウムガスの配管が破断して炉心温度が異常に高まると制御棒の挿入なしで、核分裂反応が止まるのだ。

生じた過剰高温は、炉心を構成する熱容量の大きな黒鉛が引き受ける。その熱は大気中に放出されて冷温停止が実現する。

原発事故時に求められる「止める」「冷やす」「閉じ込める」の3要件が、高温ガス炉では、人手を介することなく物理現象のみで達成されるのだ。

3段階での実証

HTTRでの今月下旬の試験は、固有の安全性の実証と併せ、核分裂反応の自動停止や燃料温度の低下などの詳細なデータ取得のために行われる


試験は30%出力(9千キロワット)での運転中に、炉心の熱を取り出すヘリウムガスの循環を止め、なおかつ原子炉圧力容器の外側に配置された熱除去装置の水流も止める。

全電源喪失を模した過酷な状況の作出だ。制御棒も使わない。この試験は高温ガス炉の開発が進む中国でも行われておらず、世界初の安全性の実証だ。

心配な人がいるかもしれないが、問題がないことは、今回よりゆるやかな条件で行われた同様の試験で確認されている。HTTRの安全実証の第1段階は福島事故前の2010年に完了しているのだ。

今回は原子力規制委員会の安全審査に合格したHTTRが昨夏、10年半ぶりに再稼働したことを受けての安全性実証試験の継続・再開という位置付けだ。3月には第3段階の100%出力での安全性実証試験が予定されている。

国際機関が期待

脱炭素社会とエネルギー安全保障の両立に向け、世界の趨勢(すうせい)は原発回帰に転じている


OECD/NEAは、日本の高温ガス炉・HTTRに備わる固有の安全性を高く評価している。

HTTRで1、3月に行われる自動停止の実証試験は米、独、仏、韓、ハンガリー、チェコの原子力研究・開発機関が参画する国際共同プロジェクトだ。

原子力機構は同プロジェクトを通じて次世代原子炉・高温ガス炉の安全設計の国際標準化への影響力浸透を目指す。

2050年のカーボンニュートラルに向け、HTTRを発展させた実用炉の開発を急ぎたい。高温ガス炉は津波の来ない内陸や水のない砂漠にも建設可能。世界が目指す小型モジュール炉(SMR)でもある。=次回は2月23日掲載予定

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