横浜の市場で新春恒例の大役に 27歳女性「競り人」

新春初競りで宝船の競り人を務める久保亜祐未さん=横浜市
新春初競りで宝船の競り人を務める久保亜祐未さん=横浜市

全国の卸売市場では長年、新春の初競りで青果の卸売りによる「宝船」と呼ばれる縁起物が取り扱われてきた。船の形をした器に野菜を盛り合わせて商売繁盛や五穀豊穣(ほうじょう)を願うという、市場では一年で最も大切にされる行事の一つだ。今月、横浜市中央卸売市場で27歳の女性がその宝船の競り人を女性として初めて務めた。長らく「男性中心」といわれてきた市場の世界で、宝船の競りを女性が担当するのは異例ともいわれる。大役を任された今回の〝物語〟の主人公は「女性の目線で流通の社会を変えたい」と抱負を語った。

今月5日午前7時、同市場内に本社を置き、青果物の卸売りを行う「金港青果」。その一角で「競り台」と呼ばれる台に立ち、集まった買い手に声を張り上げながら、横浜市内で取れた野菜が盛り付けられた宝船を競りにかけていたのが、同社営業担当の久保亜祐未さん(27)だ。同社の宝船は取引先である農家や種苗会社と共同作業で制作されているといい、思い入れの強い「作品」が競り落とされる様子を、関係者が熱心に見守っていた。

歴史を塗り替え

全国の市場でもごく少数ながら、久保さんのような女性の競り人は活躍している。ただ「競り」というと、男性が威勢のいい声で商品の価格を呼び上げ、多くの取引業者が提示する金額を読み取りながら一瞬にして、買い受け人を決めてゆく-。そんなイメージが、一般的なのではないだろうか。

実際、同社でも前身時代を含めて75年の歴史の中で新春を飾る宝船の競り人を務めてきたのは男性で、女性は久保さんが初めてだ。同社の担当者は「全国の市場でも、過去に例はなかったのではないか」としたうえで、「性別の差を感じさせない力強い仕事ぶりが抜擢(ばってき)の理由」と続ける。

新春初競り翌日の6日、取材に応じた久保さんは「昨日は声も枯れてしまったし、もっと段取りよくできた。反省8割です」といいつつも、「来年はもっとよいものにしたい」と早くも次に目を向けていた。

元々、将来は食品の商品開発をするのが夢だったが、学生時代に視野を広めようと青果物の流通を学ぶ過程で所属していたゼミを通じ、初めて一般人が立ち入れない市場の競りを見学。活気のあるその様子に「一目ぼれした」というのが現在の原点だ。

エンドユーザーは

自身の仕事を「青果の生産者と消費者の皆さまの橋渡しをする役割」と話す。これまで圧倒的に男性の多かった業界で働くことについて「お客さまから『大丈夫かな』と不安に思われてしまう面もあったかもしれない」と話す一方で、女性であることの強みもあるのではないかとも感じているという。

国内での青果物の流通量は近年、減少傾向にある。そんななか、久保さんは「野菜や果物に普段から接している、いわゆる『エンドユーザー』の多くは女性」と指摘。そのうえで「自分を生かせる場所があると思います。どんな品物がいま必要とされているのか、同性の目線に立って、これからの流通を変えていきたい」と意気込む。

季節を問わず体力の要求される競りの仕事だが、うだるような夏の暑さよりも、むしろ乾燥する今の季節の方が仕事道具の〝喉〟にはこたえるそうだ。対処法を尋ねると、「粘膜を守るビタミンAの含まれた緑黄色野菜を積極的に摂取するようにしています」と、自身が扱う商品を知り尽くした競り人の答えが返ってきた。

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