昨年7月の東京都議選期間中などに無免許運転したとして道交法違反罪に問われた元都議、木下富美子被告(55)の初公判が25日、東京地裁(平出喜一裁判官)で開かれた。検察側は、日常的に無免許運転を繰り返しており「再犯の恐れが否定できない」として懲役10月を求刑、弁護側は寛大な判決を求めて即日結審した。公判では、被告の順法意識の低さがあらわになった。
木下被告は都議選期間中の昨年7月2日、街頭演説に向かうため乗用車を無免許で運転中に当て逃げ事故を起こした。東京地検は同11月、当て逃げなどは不起訴とした一方、同5~7月に都内で計7回にわたり無免許運転をしたとして道交法違反罪で在宅起訴。被告は都議を辞職した。
木下被告はこの日、黒のジャケットに濃緑のスカート姿で出廷。冒頭で裁判官から起訴内容に間違いがないか問われると「いえ、ございません」と述べた。
冒頭陳述や被告人質問によると、木下被告は平成29年~昨年、原付きバイクの運転中などに計12回の交通違反をし、4回にわたり免許停止処分を受けていた。検察側は、被告が昨年4月に150日間(その後80日間に短縮)の免停処分となった後、同5月下旬ごろから都議会議事堂への登庁や街頭演説に向かう際に無免許運転を繰り返していたと指摘した。
弁護側の被告人質問で木下被告は、無免許運転の理由について「都議選が近づきプレッシャーが大きく、街頭演説やポスターのはりかえを自分でする必要があった」と説明。違法性の認識はあったが「コロナ禍で選挙ボランティアを集められず、運転できる人も少なかった」と釈明した。
運転免許を取得したのは30年以上前の学生時代で「ほとんどペーパードライバーだった」が、都議に初当選した後の平成30年1月から、原付きバイクで選挙区を回るように。令和2年からは車も運転し始めたが「原付きならではの交通法規を理解しないまま(一時不停止などの)違反を重ね、免許停止になってしまった」と述べた。
検察側から「(無免許運転以外の)他の方法は考えなかったのか」と問われると「めいっぱい活動したいという思いが先に立った」とし、「重たい資料があり、公共交通機関では運べなかった。私用では車も原付きも運転したことはない」などと話した。
無免許運転事故の発覚後に批判が殺到したことについて「都議の立場にありながら順法意識が薄く、罪の大きさを認識していなかった」と涙ぐんだ木下被告。昨年7月に再選して以降の議員報酬はNPO法人などに寄付したと明かし「無免許運転で失ったものはあまりにも大きく、後悔しかない。今後は二度と同じ過ちを繰り返さないよう律していきたい」と語った。
一方で、裁判官が免停につながるような交通違反を繰り返していたことについて尋ねると「違反することで交通法規を学習していった」と答え、「摘発されて学習するでは、普通運転しないでしょう」と、たしなめられる一幕もあった。
判決は来月15日に言い渡される。