和歌山県が和歌山市内の人工島「和歌山マリーナシティ」に誘致を進めている統合型リゾート施設(IR)をめぐり、和歌山市の尾花正啓市長は24日、市民団体「カジノ誘致の是非を問う和歌山市民の会」が直接請求していたIRの是非を問う住民投票条例案を同日開会の市議会臨時会に提案した。条例案には反対意見を付けた。
提案説明で、尾花市長は「(会から)条例制定の直接請求がなされたことはIR誘致の賛否を問わず、市民の関心のあらわれ」とする一方、「住民投票を実施すれば、多額の経費を要することなどを総合的に判断した結果、実施する意義は見いだし難い」と反対意見の理由を述べた。
また、住民投票を実施すれば、投票所の開設などに約8500万円の費用が想定されることも明らかにした。
質疑で市議からIR誘致への考えを問われると、尾花市長は「雇用創出を含め他に類をみない投資効果があり、今後、人口減少が見込まれる市の発展の起爆剤になり、大きなチャンスを奪うべきではない」と賛成の立場を強調した。
条例案の審議は市議会の総務委員会に付託された。25日の総務委員会で会のメンバーらが意見陳述し、臨時会最終日の27日、本会議で採決される見通し。
市議会の定数38に対し、議長を除く過半数(19人)が賛成すれば可決となり、住民投票が実施される。
尾花市長が条例案に反対意見を付けたことに、会の共同代表、島久美子さんは「市民の思いをくみ取る誠意を感じられなかった。市議はどう受け止めてくれるのかに期待したい」と話した。
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市議会に提案されたIRの住民投票条例案に、各会派で対応が分かれている。各会派の幹事長の談話は次の通り。
自民(8人)の中谷謙二幹事長「現状では各議員それぞれ意見があり、採決で足並みをそろえて投票するかは検討中」
公明(8人)の中尾友紀幹事長「市民の会の意見陳述なども踏まえて、党の考えをまとめることになると思う」
政和クラブ(6人)の戸田正人幹事長「住民の署名活動などを重くみて、会派でまとまって条例制定には賛成する方針」
共産(6人)の中村朝人幹事長「和歌山の将来にかかる重要な政策で、住民が意思表明する機会は大切。賛成する」
民主クラブ(5人)の山本忠相幹事長「個人的には賛成の立場だが、会派の各議員の個人的な考えで賛否の意思を表明する」
和歌山興志クラブ・日本維新の会(5人)の尾崎方哉幹事長「意見集約は行わず、それぞれの議員で賛成か反対かを決める」