性ホルモンを学ぶ

⑦つらい女性の更年期、男性が気を付けたいNG言動


女性ホルモンの分泌が揺らぐ更年期を迎えた40~50代女性には、心身にさまざまな不調が生じる。「何となくつらい」という倦怠(けんたい)感として表れることも多く、女性ホルモン低下による症状であることが見過ごされるケースも少なくないが、パートナーに知識があれば、適切な声掛けで早期治療につなげることもできる。更年期に特化したウェブサービスを立ち上げた「よりそる」代表、高本玲代さんに男女で乗り越えるコミュニケーションの秘訣(ひけつ)を聞いた。


怠けているのではない


「更年期症状として有名なのは大量に発汗する『ホットフラッシュ』やイライラする精神症状ですが、よくある体調不良と区別がつきにくい症状を訴える人も多くいます」

女性の更年期は、主に40~50代の閉経の時期を挟んだ約10年間で、女性ホルモン減少により、さまざまな不調が起きる。時期や症状には個人差が大きい。

ウェブメディア「サプリポート」を運営する「スタルジー」が令和元年に更年期障害について女性200人に実施したアンケートによると、最も深刻な症状として「倦怠感・無気力感」をあげる人が約2割を占めた。

高本さん自身も数年前、疲労感や頭痛などに悩まされた時期があった。

「家事の負担が増えた夫から、怠けているように言われるのがつらかった」と振り返る。

女性ホルモンの変化による症状だと分かってからは、女性の身体の仕組みについても夫に理解してほしいと考えるようになった。

夫婦のコミュニケーションの重要性を痛感した高本さんが立ち上げた「よりそる」は、更年期症状がある女性が通信アプリLINE(ライン)を使い、メッセージやスタンプで、パートナーに体調を知らせることができるサービスだ。

更年期に関する知識を夫婦でともに学び、2人で解決できない問題は、月最大5回のカウンセリングを利用できる。更年期症状に対応してくれる婦人科医の情報も得られる。

「中高年は仕事と育児、介護が重なり忙しい時期。通信アプリを活用し、隙間時間に夫婦で体調を含む困りごとについてコミュニケーションをはかってほしい」とサービスに込めた思いを語る。


男性が気を付けたいNGな言動とは


ただ一般的には、女性の更年期について十分な知識をもつ男性は少ないのが現状だ。更年期女性に寄り添うために、男性が配慮すべき点を3つ上げてもらった。


①「更年期」という言葉を直接使わない


「女性のなかには『更年期』という言葉を直接的に投げかけられると『年を取った』と言われたように感じて傷つく人もいます」

女性自身が更年期だと認識していないうちに、「更年期なんじゃない?」というのは、ケンカの火種になることもあるという。

ではどんな声掛けが適切か。例えば、夫が妻の不調を察知し、気遣う際には「女性は40代くらいからホルモンバランスが崩れて不調が増えるようだけど、そういう可能性があるのではないか」など、症状に焦点を当てた会話がおすすめだという。


②体調に関心を持ち、傾聴する


更年期症状には精神的な不調もある。抑うつ的な気分やいらだちなど多岐にわたる。

「まずは『大丈夫?』と体調に関心をもってもらいたい。どういうことをしてほしいのか、尋ねてもらえるとうれしい」

女性が精神的に不安定なときには、会話の内容が堂々巡りしているように感じることもあるかもしれない。

「もしかしたら、聞いてもらうだけで安心するのかもしれないので、そういう場合は傾聴に主眼を置いて、時間をかけて耳を傾けてほしい」


③治療で改善できることを知る


高本さんによると、女性自身が更年期症状について十分な知識を持っていないケースも多いという。

「40代以降、女性ホルモンの低下による体調不良が起きることや、そうなった際に婦人科にかかることで改善されることを、当事者だけでなく、パートナーが知っておくことは非常に大事」と力説する。

パートナーからの声掛けで受診につながり、女性を不調から救えることもあるのだという。


女性も知っておきたい男性への「伝え方」


一方、女性側もパートナーとのコミュニケーションを円滑に図る上で配慮したい点があるという。それは、自分が相手に何を求めているのか明確にすることだ。

「会話のはじめに、自分の要望を明確に伝えてから話し始めると会話がスムーズになります。単に話を聞いてほしいのか。何か問題を解決してほしいのか。何も伝えずに察してくれというのは、夫婦に限らずどんな人間関係においても難しい。更年期を家庭の〝一大プロジェクト〟と位置づけて、共に乗り越えていける関係を築いてもらいたいです」

【性ホルモンを学ぶ】

人生の節目節目に、身体的、精神的な影響をもたらす「性ホルモン」の作用に注目が集まっています。性に関する科学的な知識をもつことは、豊かな人生につながります。家庭で、職場で、学校で-。生物学的に異なる身体的特徴をもつ男女が、互いの身体の仕組みを知り、不調や生きづらさに寄り添うことを目指した特集記事を随時配信していきます。

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