需要増も事故死亡率が高いシニアカーの踏切走行

事故があった瓢箪山第2号踏切。道幅は狭く、緩やかな傾斜と段差がある=大阪府東大阪市
事故があった瓢箪山第2号踏切。道幅は狭く、緩やかな傾斜と段差がある=大阪府東大阪市

大阪府東大阪市の踏切内で昨年12月、シニアカー(ハンドル型電動車いす)に乗っていた高齢男性が横断中に転倒し、電車と接触して死亡する事故があった。同様の事故は全国各地で相次いでおり、死亡率も高い。一方で高齢化が進む中、高齢者の交通手段としてシニアカーの需要は高まっており、安全対策は喫緊の課題だ。

遮断機に接触、転倒

昨年12月9日午後4時ごろ、大阪府東大阪市の近鉄奈良線の瓢簞(ひょうたん)山-枚岡(ひらおか)間の瓢簞山第2号踏切で、シニアカーに乗った60代男性が大阪難波発近鉄奈良行きの普通電車(6両編成)にはねられ死亡した。

近鉄や大阪府警枚岡署によると、現場は遮断機と警報機がある踏切。付近の防犯カメラには事故直前、男性が横断中に下りてきた遮断機に接触し、転倒する姿が写っていたという。

事故があった瓢箪山第2号踏切。道幅は狭く、緩やかな傾斜と段差がある=大阪府東大阪市
事故があった瓢箪山第2号踏切。道幅は狭く、緩やかな傾斜と段差がある=大阪府東大阪市

道幅は約2・2メートルと狭く、自動車は通行禁止となっている。緩やかな傾斜と段差があり、決して通りやすい道ではない。男性はシニアカーでこの道を下ろうとしたが、遮断機が下りるまでに渡り切れなかったとみられる。

一帯は住宅街だが、人通りは少なく、通行人が転倒するなどのトラブルがあっても目につきにくい。遮断機が下りている間に踏切内に人や車などの進入を感知する「障害物検知装置」は設置されていなかった。

同署はさらに詳しい事故原因を調べるとともに、府内の踏切を点検して安全対策を講じる方針だ。

年間2万台超出荷

座りながらハンドル操作のみで、時速数キロのスピードで移動できるシニアカー。運転免許は不要で、高齢者らの交通手段として近年需要が高まっている。電動車いす安全普及協会によると、シニアカーの出荷台数は平成26年から増加傾向にあり、28年以降は2万台以上が続いている。

一方で、シニアカーに乗った高齢者の事故は後を絶たない。30年6月には、和歌山市のJR紀勢線踏切で、70代男性が横断中に立ち往生し、特急列車にはねられ死亡。令和3年8月にも香川県観音寺市のJR予讃線踏切で、70代女性が特急列車にはねられ亡くなっている。

独立行政法人「製品評価技術基盤機構」によると、同機構に届けられたシニアカーなど電動車いす乗車中の事故は平成28年~令和2年に23件あり、そのうち死亡事故は11件。発生場所は踏切内が最多の7件で、うち5件が死亡事故だった。踏切内は他の発生場所に比べ、運転操作のミスが死亡事故に直結する危険性が高くなっている。

AIで物体検知

相次ぐ事故を受け、鉄道各社も対策に乗り出している。

JR東日本は平成28年~令和3年、踏切内で小さな物体も検知できる高性能の障害物検知装置を重工業メーカーIHIと共同開発し、すでに280台以上を導入。一方、西武鉄道は昨年12月、池袋線の2カ所で人工知能(AI)を活用して踏切内に人がいないか確認するシステムの試験的な導入を始めた。

関西大の安部誠治教授(交通政策論)は「高齢者がシニアカーなどの車いすで踏切を渡る際、転倒したり、線路に車輪が挟まって立ち往生してしまうケースが多い」と指摘。その上で「対向車などがあっても十分な幅が取れるぐらい道幅を拡幅したり、遮断機が上がる時間を長めに設定したりすることが必要だ」と話している。(木下未希)

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