主張

日米首脳会談 「核抑止」の欠落は疑問だ

岸田文雄首相がバイデン米大統領とテレビ会議方式で約80分間にわたって会談した。本来は対面方式が望ましかったが、昨年10月の首相就任後、初の本格会談である。

インド太平洋地域の安定に向け、日米首脳による対外発信は重要だ。

「台湾海峡の平和と安定の重要性」を確認し、日米同盟の抑止力と対処力の強化で一致した。中国を念頭に、一方的な現状変更の試みに反対し、香港や新疆ウイグル自治区の人権状況への深刻な懸念を共有した。

経済安全保障推進のため、外務・経済閣僚による経済版「2プラス2」(経済政策協議委員会)新設で合意した。北朝鮮の完全な非核化への努力を確認した。

これらは妥当だが、インパクトに乏しい感は否めない。日本と地域の安全保障を確かなものにする具体策への踏み込みが不十分だからだ。

バイデン大統領は、日本が防衛費を継続して増やす重要性を指摘したが、岸田首相は防衛力の抜本強化という従来方針を語るだけで、どの程度の防衛費増額を目指すかは語らなかった。

中国や北朝鮮の核兵器の脅威から国民を守り抜く「核抑止」の問題を正面から取り上げなかったのも残念だ。

両首脳は会談で、「核兵器のない世界に向けて共に取り組んでいく」ことで一致した。首脳会談に先立ち公表した、核拡散防止条約(NPT)に関する日米共同声明は、中国に対して核軍縮に応じるよう求めた。

核軍縮・不拡散の推進は岸田首相のライフワークだ。ただし、中長期的にしか実現され得ない難しさがある。

米国防総省は昨年の年次報告で中国が核弾頭の増産を進め、2030年には少なくとも1千発保有すると分析した。中国は、核搭載可能で日本全土を射程内とする中距離ミサイルを1250基以上保有している。米国は中距離ミサイルを開発中だが現有はゼロだ。北朝鮮は中止してきた大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の再開をちらつかせている。

核軍縮・不拡散の交渉を唱えるだけでは近隣国の核の脅威から国民を守れない厳しい現実をもっと踏まえるべきだった。米国の「核の傘」(核抑止力)の充実強化も追求しなければ、為政者の責任を果たしているとはいえない。

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