映画の「成功」の基準を見直すときがやってきた ハリウッド超大作の“明暗”に見る「興行収入」という指標の価値

米国で2021年12月に公開された『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』と『マトリックス レザレクションズ』の映画館での興行収入は、『スパイダーマン』が圧倒的な大差で勝利を収めたように見える。だが、ストリーミング配信や配信との同時公開が主流になっていく時代において、もはや「成功」の基準が変わりつつあるのではないだろうか?

TEXT BY ANGELA WATERCUTTER

WIRED(US)

2021年に公開されたほぼすべての映画に対して、映画ファンは「失敗しませんように」とひそやかに懇願していた。それはある意味、映画が駄作でありませんようにという必死の願いでもある。

それはさらに、常に状況が変化し続ける新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)下で、作品が成功し、収益を上げ、観客を獲得してほしいという希望でもあった。特定のシリーズの作品や監督、映画スターが好成績を残さない場合、そのシリーズの作品や監督、映画スターの新作が出る可能性は少なくなることを、映画ファンはいまでは十分に理解している。成功はさらなる成功のチャンスを生むのだ。

しかし、コロナ禍の2022年にあって「成功」とはいったい何なのだろうか。これまで成功の指標といえば、映画なら興行収入であり、テレビなら視聴率だった。

ところが、このストリーミング配信の時代、特にパンデミックがもたらした映画館とストリーミング配信での同時公開の時代には、映画の成功を判断する単一の指標はない。このためすべての人、特にハリウッドの上層部は、将来について一抹の不安を抱いている。少なくとも『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』がヒットする前はそうだった。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、長く待ち望まれていた『マトリックス レザレクションズ』とクリスマス休暇の週末に直接対決し、完全に打ち負かした。あるいは、打ち負かしたように見えると言ったほうが正確かもしれない。

『マトリックス レザレクションズ』は公開週の週末に米国で約1,200万ドル(約14億円)を稼ぎ、『スパイダーマン』は公開2週目であったにもかかわらず8,100万ドル(約94億円)以上を稼ぎ出した。これはネオとその仲間たちにとって、かなり厳しい状況のように思える。

だが、『マトリックス』が劇場公開日に動画配信サービス「HBO Max」でも同時公開された一方で、『スパイダーマン』は劇場のみで公開されたことを忘れてはならない。とはいえ、『マトリックス』はストリーミング配信でもそれほど高視聴率を獲得しなかった。ストリーミングの視聴率を調査するSamba TVによると、スマートテレビを保有する世帯でラナ・ウォシャウスキーの『マトリックス』最新作を視聴したのは、わずか280万世帯にすぎなかった。

注目すべきデータは、それだけではない。この低い視聴率とは裏腹に、TorrentFreakは1月3日に、『マトリックス レザレクションズ』が2022年最初の週に海賊版が最も多く出回った映画だったと報告している。

会員限定記事会員サービス詳細