新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の急速な感染拡大が続くなか、ワクチン接種の対象が5~11歳に拡大されることになった。早ければ3月にも接種が始まる見通しだが、子供の致死率や重症化率は他の年代と比べるとまだ低いこともあって接種対象の子供を育てる保護者の反応は賛否さまざまだ。学校現場では接種の有無で子供に不利益が出ないよう求める声も上がる。
「無理をして打つ必要はないのではないか」。大阪府寝屋川市の男性会社員(33)の長男は今月5歳になるが、接種には否定的だ。在籍する幼稚園では「第6波」での休園はまだないといい、「子供の感染率も重症化率も他の年代と比べると低い。幼いので本人も注射を怖がるだろう。打つメリットをさほど感じない」という。
一方で、大阪府吹田市の男性会社員(44)は中学2年生の長男(14)と小学6年生の次男(12)がすでに2度のワクチンを接種していることから、小学3年生の三男(9)にも接種をさせるつもりだ。「上の2人にもそれほどひどい副反応もなかった。感染するほうが不安だ」と話す。
新たな接種対象の大半が小学生。児童の感染で臨時休校や学級・学年閉鎖などが相次ぐ学校現場ではどう見ているのか。
21日に児童の新型コロナの感染が確認された大阪市立小の女性校長は「感染症対策をより徹底していこうと教員間で話しているが、このご時世で感染者ゼロというのは難しくなっている」と頭を抱える。ワクチン接種については「打っていない人は悪いというような差別が生まれないよう授業や講話で指導をしていきたい」と話す。
別の大阪市立小の女性校長は「修学旅行などで接種証明を求められたりしないだろうか」と心配する。「学校としては接種について是も非もないが、子供に不利益が出るようなことがないよう、国や市に方針を定めてほしい」と求める。
この学校では、これまでも対象だった12歳の6年生のうち、打ったのは1割程度で、「兄姉や自身が受験を控える子が打っていたようだ」という。
日本小児科学会は、今回新たに対象となる子供へのワクチン接種について、12歳以上の子供へのワクチン接種と同様に意義があり、特に基礎疾患のある子供については重症化を防ぐことが期待されると表明。一方で、メリットとデメリットを本人と保護者が理解し、きめ細かな対応が必要としている。(木ノ下めぐみ)
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子供とコロナワクチン 国内では、これまで12歳以上の新型コロナウイルスワクチンの使用が認められていた。米国では5~11歳の接種が推奨されており、昨年11~12月、約870万回が接種された。海外の臨床試験で、2回目接種後の発症予防効果は5~11歳で90%以上だったとの報告がある。ただ新変異株「オミクロン株」への有効性を示すデータは、十分得られていない。