治療というより隔離 大阪の軽症・中等症病院長が語る「第6波」

インタビューに応じる十三市民病院の西口幸雄院長=大阪市淀川区
インタビューに応じる十三市民病院の西口幸雄院長=大阪市淀川区

新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」が猛威を振るう中、大阪、兵庫、京都の3府県が蔓延(まんえん)防止等重点措置の適用を政府に要請し、25日にも決定される見通しとなった。軽症・中等症のコロナ患者を受け入れる大阪市立十三(じゅうそう)市民病院(同市淀川区)のコロナ病床は21日時点で35%が埋まっているものの、昨年12月以降に重症化した患者はいないという。取材に応じた西口幸雄院長は感染者の急増を警戒し、「保健所の機能不全を防ぐための柔軟な対応も必要ではないか」と提言した。

早期の治療薬投与に手応え

コロナに感染した同病院の入院患者は昨年11月末、いったんゼロになったが、今年に入って感染拡大の「第6波」で徐々に増え、1月21日現在、コロナ患者用の確保病床70床のうち25床が埋まる。このうち70歳以上が10人。当初は若年層が多かったが、家庭内で感染した高齢者が増えてきたという。

昨年12月以降、同日までに入院したのは73人。オミクロン株患者やその疑いがある患者のほとんどが無症状か軽症だったといい、酸素吸入などが必要な中等症の患者は数人にとどまった。重症化した患者は一人もおらず、西口院長は「現状では治療というより隔離に近い」と実感を込めた。

重症化に至らない理由については、ワクチン接種の広がりを挙げる。軽症・中等症患者向けの治療薬の存在も大きい。オミクロン株への対応では、点滴薬「ソトロビマブ」を軽症患者33人に投与。飲み薬「モルヌピラビル」との併用者も20人いたが、全員が快方に向かった。「治療薬を投与するタイミングは早いに越したことはない。重症化予防に効果があるとみられる」と語った。

保健所の機能不全を懸念

当面の大きな懸念は、想定以上の感染スピードだという。大阪府内の新規感染者数は22日に過去最多を更新し、7375人に。感染者が急増すれば保健所の対応が間に合わなくなり、早期の治療が必要な患者が、そうではない多くの感染者の中に紛れてしまう事態を招きかねない。西口院長は「保健所が機能不全に陥り、自宅待機中に症状が悪化して死亡するというケースは防がなければならない」と話す。

実際に大阪市では保健所業務が逼迫(ひっぱく)し、感染者の症状把握「ファーストタッチ」について、重症化リスクが高い高齢者らを優先せざるを得なくなっている。

西口院長は「『オミクロン株は重症化しづらい』とは言い切れない」とし、「保健所業務がパンクすれば、患者の早期振り分けに影響を及ぼす」と指摘。コロナの感染症法上の位置付けは現在、5段階のうち2番目に高い「2類」に相当する「新型インフルエンザ等感染症」になっているが、運用上、保健所を介さずに医療機関での対応が可能な「5類」同様とすることも検討に値するとした。

5類と同じ運用であれば季節性インフルエンザと同じ対応となり、早期治療とともに保健所の負担軽減が期待できるという。

西口院長は「無症状や軽症の患者が多いからといって油断は禁物」とも指摘。「後遺症の軽重もよく分かっておらず、3回目のワクチン接種など、オミクロン株と対峙(たいじ)できうる態勢を早急に整えるべきだ」と訴えた。(小泉一敏)

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