コロナ直言(17)

社会の「最適解」 国民的議論を 医療ジャーナリスト・森田洋之氏

現在の新型コロナウイルス感染者に占める重症者や死者の割合を見ていると、新変異株のオミクロン株はデルタ株などと比較して明らかに弱毒化している。一方で、感染者数は急激に増えていることから感染力は強いとみていいだろう。

従来株は3~4カ月かけて感染が広がったが、オミクロン株が初確認された南アフリカのデータを見ると、感染拡大が始まってから1~2カ月でピークを迎えている。こうしたことから、日本では、今月末か2月初旬にピークが訪れ、その後収束に向かうのではと予想している。

これまでの蔓延(まんえん)防止等重点措置や緊急事態宣言に伴う措置は何だったのか。飲食店への時短営業や酒類提供の自粛要請をしても感染者は増えるし、何の要請もしなくても勝手に減る。結局、ウイルスがどう動くかは人間にはほぼ分からない。

《デルタ株が猛威を振るった昨夏の「第5波」では、首都圏で入院できずに自宅で亡くなる人が相次いだ。「第6波」でも感染者の急増で病床や宿泊療養施設の使用率は上昇傾向にある》

政府は一昨年4月、1回目の緊急事態宣言発令時に「感染者数の伸びを抑制して医療体制を充実させる」といった趣旨の説明で、国民に行動制限や営業自粛を要請した。日本は、欧米の5倍にもなる約160万床の病床があるが、2年たってもコロナ対応のために確保しているのはそのうち2・5%の約4万床にとどまっている。

欧州では医療は、警察や消防と同じように公的な存在だが、日本は約8割の医療機関を民間が運営しており、自由競争に任せていることが原因の一つだ。

確かにこの仕組みには、医療機関が切磋琢磨(せっさたくま)して医療の質が上がるというメリットはある。だが今回のような有事の際には指揮命令系統が一切なく、迅速な対応ができないという問題もある。

《感染症法に基づく分類で危険度が5段階で2番目に高い「2類相当」とされている新型コロナ。一部首長らからは、危険度が最も低い「5類」への引き下げを検討するよう国に求める声もある》

オミクロン株の重症化リスクの低さを考えれば2類相当である必要はなく、5類に変更すべきだと考える。

コロナに感染しないということはもちろん重要だが、健康というのは身体的なものだけでなく、人と交流する、コミュニティーで活動するといった心の健康も含まれる。休校やリモート授業が続いた令和2年度、子供の自殺は過去最多となってしまった。行事はなくなり、マスクによって人の顔もまともに見られない。コロナに対する社会の反応を子供たちはすごく敏感にとらえており、彼らへの教育やメンタル面に与える影響が心配だ。

英国ではオミクロン株の感染のピークが過ぎたとして学校や公共交通機関でのマスク着用義務を撤廃する。規制を緩める国も出始めている。

季節性インフルエンザには例年約1千万人がかかり、関連で亡くなるのは推計約1万人。肺炎でもコロナ前は毎年約10万人が亡くなっていた。従来株より感染力は強いものの弱毒化しているオミクロン株に対して、従来株と同じように社会全体を止めて対処すべきなのか。そろそろ国民全員で日本社会の「最適解」はどこにあるかを議論するときなのではないか。(聞き手 小川原咲)

森田洋之氏(本人提供)
森田洋之氏(本人提供)

もりた・ひろゆき 医師、医療経済ジャーナリスト。一橋大経済学部卒業後、宮崎医科大医学部入学。宮崎県内で研修終了後、平成21年から北海道夕張市の診療所で勤務。令和2年に鹿児島県で「ひらやまのクリニック」を開業。診療のかたわら執筆や講演活動を行う。

新型コロナの感染拡大「第6波」が押し寄せている。台頭するオミクロン株は感染拡大のスピードが極めて速いものの、重症化リスクの低下が指摘されている。適用が相次ぐ蔓延防止等重点措置は飲食店対策が中心で、有効性を疑問視する声もある。今こそウイルスとの共存を考えるべきでないか。専門家が「直言」する。


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