話の肖像画

真矢ミキ(19)「宝塚の美咲洋子」だった経験生きた

平成24年ごろ
平成24年ごろ

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《NHKの連続テレビ小説「風のハルカ」(平成17年)でのヒロインの母親役や、検事や弁護士など、人情味もあるキャリア女性役を多く演じた。当たり役の一つが18年、フジテレビ系で放映された、航空会社が舞台のドラマ「アテンションプリーズ」における客室乗務員(CA)の教官、三神たまき役だ》


わが家は父も兄も航空会社勤務で、親戚にもCAがいましたから、こういう形で自分も同じ業界に関われたのは、奇遇でうれしかったですね。実は出演前、役作りのため日本航空のCAの授業を、こっそり受講させて、とお願いしたんです。ですが生徒の中で、「明らかに貫禄があり、目立つのでは…」と残念ながら却下されてしまいました。


《ヒロイン美咲洋子(上戸彩さん)が、苦難を乗り越え、一人前のCAに成長していく物語。知的な三神教官役は「第二の主役」と評判になった》


手の位置など立ち居振る舞いから、航空用語の一語一句、言葉遣いまで、撮影現場では現役CAの方々に横についてもらって徹底的に教えていただき、私も裏では生徒そのもの。特に私の役は教官だけに、誰よりも完璧でなければならず、なかなか難しいものがありました。ただCAはどんな状況でも、柔軟な態度を崩してはいけないので、俳優に通じると思いました。

女優って聞くと、女性らしく華やかなイメージを持たれる職業だと思いますが、私は一番求められるのは、精神面の強さだと思います。演出家やスタッフに、ときに怒鳴られたり、せりふや立ち位置などの変更は、本番直前でも来ます。それでも、その場で覚え、実践できるのがプロとされます。その緊張感の中で、役になり切る集中力を見せなければなりません。内面と外面のギャップは、CAの方々と同じと感じました。


《三神教官は、落ちこぼれCA候補の洋子に厳しく接する役。しかし自分自身、宝塚音楽学校時代は劣等生だっただけに、洋子に他人とは思えない愛情を注ぐことができた》


ヒロインと一緒にして恐縮ですが、私は〝宝塚の美咲洋子〟でしたね。何しろ成績は39人中37番。CAも宝塚も、みんなが憧れて入ってくる中、私は無知のまま入学し、みんなより苦労し、しかも「トップスターになりたい」と無謀に夢は大きく描き、周囲から笑われていました。それがバネになったから、結果としてよかったんですけど。


《美咲洋子への指導役は、花組トップスター時代の経験が生きたという》


後輩はみな同じ性格ではないし、世代間のギャップもあります。だから教える、という行動は、大変な労力が要る。でも愛情を持って手を離さなければ、叱っても注意しても大丈夫、というのが私なりの過去の感触でした。それは劣等生だった私にチャンスを与え、諦めず指導してくださった宝塚の先生や先輩方から、学んだことでもあります。

私がトップ時代、朝の自主稽古に必ず遅刻する後輩がいました。成績も悪くないし、悪気もなさそうでしたが、時間だけはルーズ。なので私、彼女に「私が出てない場面だけれど、稽古にあなたが遅刻しないよう待ってるから」と言って、数日、約束の15分前に行ったんです。それを続けたら彼女、きちんと時間を守るようになりました。

圧倒的な威圧作戦、ウザイでしょ?(笑)。ただし「ここまで、やってあげたのに」とだけは思わないよう、自分にもルールを課し、後輩に接しました。どんな経験も、いつか役に生きる、とこの教官役で改めて感じ、感謝しましたね。(聞き手 飯塚友子)

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