アジア初 ノーベル賞の野依良治氏らに歴史的化学論文大賞

福井謙一氏(京都大福井謙一記念研究センター提供)と野依良治氏
福井謙一氏(京都大福井謙一記念研究センター提供)と野依良治氏

米国化学会は、ノーベル化学賞を平成13年に受賞した野依良治・名古屋大特別教授の「不斉触媒反応」に関する論文と、昭和56年に受賞した福井謙一・京都大名誉教授(故人)の「フロンティア電子理論」に関する論文を、「歴史的化学論文大賞」に選出した。化学の歴史を塗り替える飛躍的な革新をもたらした偉大な論文と、その研究が行われた機関をたたえるもので、アジア発の論文が受賞するのは初めて。

野依氏は20日、決定を受けてオンラインで記者会見し、「日本初の顕彰であり、大変光栄で名誉なことだ。私自身ではなく論文がよかったということで、それを育てていただいた名古屋大学が表彰されたことに意義があると思う」などと受賞の喜びを語った。

化学物質には、成分が同じでも人間の左右の手のように構造が違う光学異性体があり、それぞれ性質が全く異なる。作り分けは困難だったが、野依氏は名大教授時代の昭和62年、分子科学研究所、高砂香料工業との共同研究で、化学反応を自在に操る分子性触媒という物質を使い、一方の有用物質だけを効率的に作る「不斉合成」を実現したことを論文で発表した。

これにより、ハッカの成分であるメントールの工業生産のほか、抗生物質や抗炎症薬、心臓病治療薬開発など、幅広い分野に有機合成化学を応用する道を開いた点が評価された。

一方、福井謙一氏は、化合物の分子内の電子の在り方を量子化学により考察。一番不安定な電子「フロンティア電子」の密度が化学反応に関与しているとするフロンティア電子理論の論文を、京大教授だった昭和27年に発表した。その結果、化学反応への理解が飛躍的に向上。バイオ分野やエレクトロニクス分野にも必要不可欠な理論となった点などが評価された。

歴史的化学論文大賞は、2006(平成18年)に創設された。革新的で波及効果が大きく、発表から25年以上経過しても色あせない化学論文が対象。研究が行われた機関に対して記念の盾が贈られる。これまで、アボガドロの分子説、パスツールの光学活性体、メンデレーエフの元素周期律、ワトソン・クリックのDNA二重らせんなど、画期的な重要研究の論文約80件が選ばれてきた。

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