神々の護符、生活と密着 古代エジプト展・死と再生の物語㊦

ハトホル女神の護符 年代不詳、ファイアンスライデン国立古代博物館=All images©Rijksmuseum van Oudheden(Leiden, the Netherlands)
ハトホル女神の護符 年代不詳、ファイアンスライデン国立古代博物館=All images©Rijksmuseum van Oudheden(Leiden, the Netherlands)

私たちがさまざまな思いをもってお守りを手にするように、古代エジプト人も護符を身につけた。当時は2千柱もの神々がいたとされる多神教の社会だったが、その大半は町や村の守護神的な神々であり、庶民が実際に知っていたのは、国家の主要な神々をのぞけば、自分たちの生活にとって重要な神々にすぎなかった。

ここに示す2点の護符は、中でもよく知られた神々の護符で、タウェレト神は出産の女神として、ハトホル女神は愛や豊穣(ほうじょう)の女神としてそれぞれ人気があった。タウェレト神を示すカバは繁殖力が強く、ハトホル女神を示す雌牛は仕草(しぐさ)が愛らしいといったように、神々の性格は関連する動物の特徴をよくあらわしている。

神々の多くは動物の頭部に人間の身体をもっているが、それは人に動物がもつさまざまな力を加えた存在が神々であったことを意味していた。また、日本の八百万(やおよろず)の神々という表現がそのまま当てはまるかのごとく、睡蓮(すいれん)などの植物や大気といった身の回りの自然も神々の表現に用いられた。

タウェレト神の護符 後期王朝時代、第26王朝(前664~525年ごろ)、ファイアンス=ライデン国立古代博物館 All images©Rijksmuseum van Oudheden(Leiden, the Netherlands)
タウェレト神の護符 後期王朝時代、第26王朝(前664~525年ごろ)、ファイアンス=ライデン国立古代博物館 All images©Rijksmuseum van Oudheden(Leiden, the Netherlands)

こうした護符は死後も必要とされ、今回展示している1体のミイラからはCTスキャンで内部をみたところ護符をつけた首飾りが発見された。また、護符のリストを記した『死者の書』もみられる。現世のみならず、来世においても神々の力は必要であり、それは動物や植物といった自然とともに生きた古代エジプト人の世界観をあらわしている。(中部大学教授 中野智章)

「ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展」の見どころについて、監修者の中野教授に全3回で解説してもらった。同展は、神戸市中央区の兵庫県立美術館で2月27日まで。

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