【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が、党の会議を通じて核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の再開を示唆したのは、昨年1月のバイデン米政権の発足以来、米国への刺激を避けて出方を探ろうとしてきた「モラトリアム(猶予)」時期の終焉(しゅうえん)を意味する。段階的に緊張を高め、バイデン政権を揺さぶる戦術にシフトしたとみられる。
北朝鮮がバイデン政権に求めてきたのは2つ。1つは、北朝鮮が「敵視政策」とする米韓合同軍事演習や米戦略兵器の韓国展開の中止。もう1つは、新型短距離弾道ミサイルの発射など新兵器の実験や訓練を北朝鮮の「自衛権」行使として認めることだった。
トランプ前米大統領は2018年にシンガポールで行われた初の米朝首脳会談で、自ら米韓演習の中止を提案した。北朝鮮が繰り返した短距離弾道ミサイル発射を問題視することもなかった。トランプ、金両首脳は翌年のベトナム・ハノイでの再会談で物別れとなったものの、互いに親密さをアピールする〝蜜月関係〟を最後まで保った。