【ロンドン=板東和正】ジョンソン英首相は19日、人口の大半を占める南部イングランドで公共交通機関や映画館などでのマスク着用義務を撤廃すると表明した。ワクチン接種証明の提示を免除し、在宅勤務の奨励も打ち切る。新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の感染がピークに達し、重症者も増加していないとみて判断した。行動規制をほぼ撤廃し、「ウイルスとの共生」を進める方針だ。
英政府はオミクロン株に対応するため、昨年11~12月にかけ、イングランドで公共交通機関や店舗、映画館などでマスク着用を義務付けたほか、在宅勤務を奨励。ナイトクラブなどでワクチン接種証明の提示も義務化した。オミクロン株の感染拡大を受けて導入したこれらの行動規制は今月27日から撤廃される予定。
ジョンソン氏は19日、「英国の科学者は(英全土で)オミクロン株の感染がピークに達した可能性が高いと考えている」と指摘。英国で対象者の6割超が追加接種(ブースター)を受けたことを踏まえ、ワクチンの効果を強調した。新型コロナ感染で集中治療室に入る患者も減少しているとの見解を示した。
英国では、昨年12月からオミクロン株の影響で新型コロナの1日当たりの新規感染者数が急増。今月4日に21万8千人超となり過去最多を記録した。同月中旬以降も10万人近い日が続いているが、減少傾向にある。1日当たりの新規入院患者数も4万人近くだった昨年1月のピーク時に比べ、今月中旬以降は2万人弱にとどまっている。
ジャビド保健相は19日、「インフルエンザと共存するように新型コロナと共存することを学ばなければならない」と強調。規制をほぼ撤廃した上で「ウイルスとの共生」を進める考えを示した。
一方、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は18日、オミクロン株の感染が世界で拡大しているとし、「まだどの国も危機を脱したわけではない」と強調。「このパンデミック(世界的大流行)は終わりとは程遠い」と述べ、警戒を促した。