巨人新規参入で復活なるか プロ消滅の女子野球

巨人のファン感謝イベントで原辰徳監督(左端)とともに壇上に上がった島野愛友利投手(右隣)ら女子選手=令和3年12月8日、東京・両国国技館(中井誠撮影)
巨人のファン感謝イベントで原辰徳監督(左端)とともに壇上に上がった島野愛友利投手(右隣)ら女子選手=令和3年12月8日、東京・両国国技館(中井誠撮影)

昨年12月、創設から10年余りの歴史を持つ日本女子プロ野球リーグ(JWBL)が、その活動にひっそりと終止符を打った。国際大会で好成績を収め、競技人口も増加傾向にある女子野球だが、プレー環境には恵まれていない。一方で、巨人が女子野球チームを創設する方針を明らかにするなど、プロ野球側から参入の動きが相次ぐ。新たな血は、女子野球活性化の起爆剤になるだろうか。

甲子園胴上げ投手も

昨年12月8日、東京・両国国技館で行われた巨人のファン感謝イベント。壇上に、巨人のユニホームに身を包んだ女子選手4人が上がった。巨人はこの日、令和5年からの活動開始を目指して女子野球チームの創設準備を進めると発表。4人はその1期生だった。

日本野球機構(NPB)のプロ12球団が女子チームを創設するのは、令和2年4月の「埼玉西武ライオンズ・レディース」、昨年2月の「阪神タイガースWomen」に続き3チーム目。だが、「長く日本のプロ野球をリードしてきた当球団として、より高いレベルを目指す女子野球選手がトップアスリートとして活躍できるよう女子硬式野球チームを創設する」と〝球界の盟主〟としての自負を強くにじませた。

1期生4人のうちの一人が、昨年夏に球児の聖地、甲子園球場で初めて開催された全国高校女子硬式野球選手権大会決勝で胴上げ投手となった兵庫・神戸弘陵高のエース島野愛友利投手(17)。小学生の頃から男子に交じってプレーを続けてきた島野は「女子野球界の発展に少しでも貢献できるように頑張りたい」と力を込めた。

繰り返された歴史

「NPBにも女子の野球チームが結成され、全国に小学生~社会人まで数多くの女子野球人口が増えました。私たちの役目は終わったと思います」。昨年12月30日、JWBLを運営してきた日本女子プロ野球機構は無期限休止を発表するとともに、ホームページにこう記した。

同機構は女子野球のレベル向上と競技人口拡大を目的に、健康食品会社「わかさ生活」(京都市)が3億円を出資して平成21年に設立。翌年からJWBLを運営してきた。当初は2つだったチームも4つに増え、全国で試合を開催。しかし観客動員が伸び悩んだこともあってリーグ経営は厳しく、令和元年に所属選手71人のうち36人が退団。コロナ禍も追い打ちをかけ、昨年は公式戦を開催できなかった。

日本女子プロ野球の退団が決まり、試合後、声援に応える加藤優外野手。プレーだけでなく、「美しすぎる野球選手」としても話題を呼んだ=令和元年11月、わかさスタジアム京都(岡田茂撮影)
日本女子プロ野球の退団が決まり、試合後、声援に応える加藤優外野手。プレーだけでなく、「美しすぎる野球選手」としても話題を呼んだ=令和元年11月、わかさスタジアム京都(岡田茂撮影)

日本では過去にも昭和25年結成の日本女子野球連盟が女子プロ野球を開催したことがあるが、活動はわずか2年で終了。今回も女子プロ野球を定着させることはできなかった。

「ウィンウィン」築けるか

ワールドカップ(W杯)を6連覇するなど、日本の女子野球のレベルは国際的にみてもトップクラスにある。だがその受け皿となる選手の待遇は男性のプロ野球選手はもちろん、女子サッカー選手にも遠く及ばないのが実情だ。西武と阪神が創設した女子チームもプロではなく、アマチュアのクラブチーム。選手の多くは野球と関係のない仕事を持ち、週末などに集まって活動している。

阪神タイガースWomen主将の三浦伊織外野手(29)の場合は、阪神の球団職員として平日は球団主催のスクールで子供たちに野球を教えている。チーム全員がそろっての練習は土曜日だけ。JWBLの選手としてプレーそのものが仕事だった昨年までとは、大きく環境が変わった。

阪神タイガースWomenで主将を務める三浦伊織外野手。日本女子プロ野球で「女イチロー」と呼ばれた打撃は健在だ=令和3年6月、和歌山県田辺市(水島啓輔撮影)
阪神タイガースWomenで主将を務める三浦伊織外野手。日本女子プロ野球で「女イチロー」と呼ばれた打撃は健在だ=令和3年6月、和歌山県田辺市(水島啓輔撮影)

それでも三浦は「誰もが知っているタイガースの女子チームに入ったことで、多くの人にプレーを見てもらえるようになった」とプロ野球阪神と同じ伝統の縦じまのユニホームでプレーするやりがいをこう話す。「男性のプロ野球選手が多くの子供たちの目標になっているように、野球をやっている女の子が私を目指したいと思ってくれれば」

一方、NPBから女子野球への参入が相次ぐ背景には、少子化やスポーツの多様化で野球人口の減少が大きな課題となる中、女子は伸びしろが大きいことが挙げられる。高校野球でみると、男子の日本高野連加盟校数が16年連続で減少しているのに対し、全国高校女子硬式野球連盟の加盟校数と登録選手数は平成27年の19校698人から昨年は43校1320人にほぼ倍増した。

新たなプロリーグ立ち上げも含め安定したプレー環境を求める選手側と、野球の裾野を広げたいNPB側。双方がウィンウィンの関係で女子野球を発展させていけるか、これからの数年が大きな鍵となりそうだ。 (上阪正人)

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