トンガ沖噴火での地球寒冷化は「限定的」 東北大教授

トンガ沖の大規模噴火が気候に与える影響は少ないとの見方を示す東北大の早坂忠裕教授=19日、仙台市
トンガ沖の大規模噴火が気候に与える影響は少ないとの見方を示す東北大の早坂忠裕教授=19日、仙台市

南太平洋のトンガ沖で起きた海底火山の大規模噴火は地球の寒冷化をもたらすのだろうか─。フィリピンのピナトゥボ火山の大噴火(1991年)は日射量の減少を招き、世界各地で気温が低下した。日本でも2年後に記録的な冷夏となり、深刻な農業被害を生じさせた。ただ、トンガ沖の噴火は寒冷化を招く化学物質の放出量が比較的少ないとみられ、大気放射学や気候変動を専門とする東北大の早坂忠裕教授は「現時点では気候に与える影響は限定的だろう」と指摘する。

15日にトンガ沖で起きた海底火山の噴火で生じた噴煙は高度16キロの対流圏を超え、成層圏で最大30キロに達したことが米航空宇宙局(NASA)で観測された。過去の大規模な噴火は、地球規模で一時的な気温の低下をもたらした。

「20世紀最大の噴火」といわれる91年6月に発生したフィリピン・ルソン島のピナトゥボ火山の噴火後は、地球の平均気温が約0・5度下がり、回復するのに4~5年かかった。

また、1815年のインドネシアのタンボラ火山の大噴火でも、世界各地で異常低温の状況が続いた。翌年は北欧や北米では「夏のない年」と言われた。

早坂氏によれば、大噴火が寒冷化を生じさせるメカニズムは、火山ガスに含まれる二酸化硫黄に起因する。

二酸化硫黄は成層圏内で化学反応を起こし、硫酸に液化。この粒子は直径0・1ミクロン程度と非常に軽く、成層圏は降雨現象もないため、落下しにくい。数年にわたって滞留する微細な硫酸が太陽光を散乱し、地表に光が届きにくい状況が生じる。

ただ、トンガ沖の噴火で放出された二酸化硫黄の量はそれほど多くないという。欧州宇宙機関(ESA)の人工衛星が17日に観測したデータによれば、約40万トンだ。ピナトゥボ火山の噴火は、トンガの50倍にあたる約2千万トンの二酸化硫黄を噴出したと分析されている。

早坂氏は産経新聞の取材に、「二酸化硫黄の量が少ないので、トンガ沖の噴火が気候に与える影響はピナトゥボほどではないだろう」と説明する。ただ、トンガ沖で噴火が継続して起こる可能性もあり、予断は許さないという。

トンガ沖の噴火はトンガに甚大な被害をもたらしたとみられる。最大15メートルの高さの津波が襲い、トンガ全土に火山灰が堆積し、水源が汚染された可能性もある。早坂氏は「トンガの現状がどうなっているかが心配だ。東日本大震災で被災した日本もトンガの窮状に思いをめぐらせてほしい」とも語った。(奥原慎平)

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