バイデン政権1年、対中貿易政策に不満の声 見えぬ打開策

バイデン米大統領(ゲッティ=共同)
バイデン米大統領(ゲッティ=共同)

20日で発足1年となるバイデン米政権の対中貿易政策について、「戦略性を欠く」などとする不満の声が米産業界や専門家らで噴出している。中国の不公正貿易への対抗策として、バイデン政権は、トランプ前政権が導入した制裁関税を継続するなど「現状維持」で臨んできた。だが、中国が市場をゆがめる産業政策を改める兆しがみえず、打開策につながる方針転換を求める「内圧」が強まっている。(ワシントン 塩原永久)

「必要なのは米政府の一貫した戦略だ」

全米商工会議所のクラーク会頭は11日、対中貿易政策をめぐり、そう述べた。

ロイター通信によるとクラーク氏は、日中韓など15カ国が参加して今月1日に発効した地域的な包括的経済連携(RCEP)協定などを念頭に、米国が「出遅れている」と批判した。

バイデン政権の対中政策については、米外交誌フォーリン・アフェアーズなどで、専門家から「明確な目標を欠いている」(新アメリカ安全保障センターのフォンテーヌ氏)などと刷新を求める指摘が相次ぐ。

トランプ前政権が中国と合意した「第1段階」貿易協定は、発効から約2年たったが、成果は乏しい。バイデン政権は協定をめぐって、中国との再協議を表明したものの、交渉は「行き詰まっている」(中国側関係者)と伝えられている。

労働者を重視するバイデン米大統領は、自国産業を保護する狙いから、前政権が発動した制裁関税を維持した。バイデン氏が掲げる「中間層外交」は、トランプ前大統領の「米国第一」主義と「むしろ類似点が多い」(米外交問題評議会のハース会長)との評価だ。

バイデン氏は中国との覇権争いを「民主主義と権威主義の競争」と捉え、米国の競争力を強化する方針を示してきた。ただ、ハイテク分野の基幹部品となる半導体で、国内メーカーへの約520億ドル(約6兆円)の支援を盛り込んだ対中競争力強化法案は、昨年6月に上院で可決して以降、議会審議が停滞している。

米政権のキャンベル・インド太平洋調整官は、2022年にアジア地域で経済連携を強化する方針を示した。国内労働者の反発を懸念し、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への復帰を封じたバイデン氏は、「インド太平洋の新たな経済枠組み」構想を打ち出した。だが、踏み込んだ具体策が伴わなければ、米国の指導力は失墜しかねない。

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