笠原慶久・九州FG社長 DXはリスクでありチャンス

インタビューに答える九州フィナンシャルグループの笠原慶久社長
インタビューに答える九州フィナンシャルグループの笠原慶久社長

新型コロナウイルスに終始した令和3年だったが、地場の熊本、鹿児島両県を含む九州経済は決して悪い状態にはない。半導体や電子部品、ICT(情報通信技術)関連は好調で、当初、熊本地震からの復興需要の剥落が懸念された建設業も底堅い。今年も、まだ途上にある新型コロナからの回復が期待できる。

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、大転換という意味でリスクでもありチャンスでもある。デジタル化に積極的に対応していくことであらゆる業界にチャンスがある。

政府が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げる中、環境問題への対応は企業にとっても待ったなしだ。これをコストと考えることもできるが、逆に世の中の転換期でビジネスチャンスはたくさんある。

あらゆる業種、事業規模の企業で積極的に対応してチャンスをものにしていく。今年はそういう1年にしていきたい。

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飲食、宿泊業などは昨年末にかけて改善したものの、まだまだコロナからの回復途上にある。しっかりと支援し続けなければいけない。

支援のフェーズは変わってきている。一昨年、コロナの感染拡大が始まり早い段階で潤沢な資金繰り支援を実施してきたので、昨年も強い資金需要があったわけではない。現在は「アフターコロナ」の社会でデジタル化が進み、働き方も変わっていく中で、生き残れるように事業の再構築を支援していく段階にある。

飲食、宿泊業界はコロナの影響で相当、資本が毀損(きそん)していて、業界全体で債務超過になるとみている。単なる資金繰りではなく、長期的な資本性資金を入れていくことも必要だろう。今のところ、保守的に引き当てている信用コストは顕在化していないが、今後どうなるかはまだ分からない。しっかりと支援に腰を入れていく。

昨年、令和5年度までの中期経営計画がスタートした。10年後にビジネスモデルの転換を完成させるというつもりで、改革に取り組んでいる。

DXはわれわれにとっても成長の柱だ。昨年、「肥銀コンピュータサービス」の社名を「九州デジタルソリューションズ」に変えて、地域のDXを担う会社として位置付けた。既存の銀行ラインも全面的に協力しながら、地域のDX推進のために働いて、収益を伸ばしていきたい。

3年9月中間決算では肥後銀行で取り組んでいるSDGs(持続可能な開発目標)コンサルティングが好評で増益に寄与した。今後もこの流れは止まらないだろう。温室効果ガスの排出量測定や事業をゼロカーボン化するための戦略策定などいろいろなコンサルニーズが次から次へと出てきている。企業は時代の変化に応じて経営戦略を変えなければならない。その手伝いをしていきたい。

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長期的には、令和12年度には非銀行部門の収益率を全体の4割にまで引き上げる目標を掲げている。DXやコンサルティングのほか、人材紹介やクラウドファンディングなど、いろいろなビジネスの種をまいているので、しっかり育てていきたい。銀行法改正でITシステム販売が銀行業務として認められることになったので、クラウドビジネスへの参入も視野に入れている。

グループ傘下の九州FG証券は昨年度、黒字化し、今年度も黒字幅が拡大している。来年度上期には累積損失を解消し、今後は連結収益に貢献していくと思う。もはやわれわれは「地域金融機関」というよりは「地域共創機関」と位置付けていて、金融は共に地域をつくっていくためのメニューの一つであるという考えで進んでいきたい。

(半導体大手の)TSMC(台湾積体電路製造)の熊本進出は九州にとって大きなインパクトがある。関連産業の活性化をはじめ、雇用創出、人口増加によるサービス業の活況など大きな波及効果が見込める。

一方で周辺の人手不足を懸念する声もあるが、そこはポジティブに捉えて、1人当たり生産性を向上させることで解決するしかない。生産性の向上は所得増にもつながる。TSMCの進出もいい意味での環境変化だ。それをどう生かしていくかが大事になる。(小沢慶太)

かさはら・よしひさ 昭和37年1月、東京都出身。慶応大経済学部を卒業後、59年に富士銀行(現みずほ銀)に入行。法人業務部長、みずほ信託銀常務執行役員などを経て、平成27年4月に肥後銀常務執行役員監査部長に就任。30年6月から同行頭取、令和元年6月から九州FG社長を務める。

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