経営危機に陥ったシャープが台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入って5年が過ぎた。鴻海流の徹底した合理化とコストカットによって1年で通期黒字を達成し、業績はV字回復。黒字を確保し続けている。しかし、鴻海の事業戦略はシャープが得意とする液晶から電気自動車(EV)へとシフト。鴻海出身で再建の立役者といえる戴正呉(たいせいご)会長兼最高経営責任者(CEO)は今期限りで退任する意向を示すなど、先行きに不透明感が漂う。
数年分の改革を数カ月で
令和4年に創業110年を迎えるシャープ。ものづくりで発展してきた日本を代表する電機メーカーの一つだった同社の危機的状況を救ったのが、電子機器受託製造の世界大手、鴻海だった。
さかのぼること20年ほど前、シャープは液晶テレビ事業で成功を収めて業績を拡大していた。積極的な投資で国内工場を建設し、生産地がブランド化された「世界の亀山モデル」のテレビは飛ぶように売れた。平成19年度の売上高は3兆4千億円に上り、最終利益は1千億円を超えていた。
ところが、アナログから地上デジタル放送への移行を受けた買い替え需要が一巡するとテレビの売り上げは急落。リーマン・ショックの影響や低価格を売りにした中国、韓国メーカーの台頭で業績は悪化の一途をたどり、24年度には5400億円もの巨額赤字に陥った。