棺に込めた復活の願い 古代エジプト展 死と再生の物語㊥

アメンヘテプのミイラ覆い(部分)第3中間期、第21王朝(前1076~944年ごろ)、木=ライデン国立古代博物館Image©Rijksmuseum van Oudheden(Leiden, the Netherlands)
アメンヘテプのミイラ覆い(部分)第3中間期、第21王朝(前1076~944年ごろ)、木=ライデン国立古代博物館Image©Rijksmuseum van Oudheden(Leiden, the Netherlands)

今回の展覧会では、12点の棺(覆い・内棺・外棺)を立てる日本初の展示を行っている。紀元前1000年頃にはじまる第3中間期には、墓が簡素になり棺が豪華になった。会場では正面左から右に向かって古いものから新しいものへと棺を並べているので、装飾や形状が変化する様子が一望できるとともに棺の大きさも実感できる。

ミイラ覆いとはミイラの上に置いたカバーのことで、埋葬の際にはミイラと覆いを内棺に入れ、さらに大きな外棺に納めた。ロシアのマトリョーシカ人形を思い浮かべると分かりやすい。このアメンヘテプのミイラ覆いは中でもひときわ豪華な装飾が目をひくが、その意味を上から順に読み解いてみよう。

頭部には、死者が冥界の神オシリスとなったことを示すかつらをかぶり、交差した腕はミイラ姿のオシリスをあらわしている。実はあるはずの「ひげ」がないのだが、下からのぞくと、それを取り付けるための穴がみえる。腰から脚にかけてみえる十字の区画は、会場で展示している男性のミイラの布の巻き方と同じである。

図像の数々は、死者の再生復活にかかわるものばかりである。肩から胸に掛けてまとう幅広のえり飾りにみえる睡蓮(すいれん)、太陽を押し上げるフンコロガシをかたどったスカラベ、死者を保護する有翼の女神ヌウトなど。こうした図像は中央や両脇の銘文帯に記されるヒエログリフとともに、覆いに込められた呪力を高める働きがあった。

私たちは文字と絵をわけて考えがちだが、よく見ると、絵と同じ柄の文字があちこちに記されているのがわかる。また黄色地は太陽の光を示しているが、さまざまな色は文字や絵と一体となってその効果を高めたのである。(中部大学教授 中野智章)

「ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展」の見どころについて、監修者の中野教授に全3回で解説してもらった。同展は、神戸市中央区の兵庫県立美術館で2月27日まで。

会員限定記事会員サービス詳細