ソウルからヨボセヨ

ワクチンと韓国社会

ソウル中心部をマスク姿で歩く市民ら=2021年12月31日(共同)
ソウル中心部をマスク姿で歩く市民ら=2021年12月31日(共同)

「直接お会いするのは最初で最後になるかもしれません」。喫茶店で待ち合わせた初対面の取材相手の男性から、そう切り出された。聞けば、飲食店利用の条件となるワクチン追加接種の期限が迫る中、接種を拒む意向なのだという。

韓国では10日から、食堂や百貨店、大手スーパーへの入店で接種証明提示の義務化が始まった。「過度の規制」に抗議する訴訟も起こされ一部内容は修正されたが、接種をしなければ今後相当の不便を被ることは間違いない。男性は韓国国内ワクチンの温度管理などに問題があるとの持論を展開し「ワクチンで死ぬよりはマシだ」と訴えた。

日本と同様、欧米などに比べればワクチンへの抵抗が少ない韓国だが、それでも「陰謀論」などを主張する人に時々出くわす。オンラインの貿易業者やフリーライターなど、みんなネット社会と関係が深い人たちだったのは偶然だろうか。

逆にワクチン接種が本格化した昨年春を振り返れば、当初こそ危険性を懸念する人が多かったものの、その後は接種しなければ後ろ指をさされるような空気の中で、予約が殺到したのを覚えている。

接種を加速させる高い同調圧力と、接種を思いとどまらせる出処不明のネット情報。韓国社会の実情を映しているように思えると同時に、人ごとではないとも感じた。(時吉達也)

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