オミクロン株拡大でがん検診の受診控え広がる 医師ら危機感

胃の内視鏡検査で撮影された写真を基に診断を行う医師ら。令和2年の緊急事態宣言に際しては内視鏡検査が行えなくなり、がん検診受診数減少の一因となった(がん研有明病院提供)
胃の内視鏡検査で撮影された写真を基に診断を行う医師ら。令和2年の緊急事態宣言に際しては内視鏡検査が行えなくなり、がん検診受診数減少の一因となった(がん研有明病院提供)

新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の感染者が増える中、がん治療への影響を懸念する声が高まっている。感染を恐れ定期的ながん検診の受診を見合わせたり、がん患者が手術後の定期検査を先延ばししたりする動きが広がり、治癒が困難になる例が急増する心配があるためだ。がん専門病院の首脳らは「受診控えは重大な結果につながりかねない」と警鐘を鳴らす。(佐藤健二)

気づかない患者

「コロナ禍の中、進行した状態で見つかるがん患者が明らかに増えている。半年の遅れは命取りになる」

年間を通し多くの大腸がん手術を手掛ける、がん研有明病院消化器センター長・大腸外科部長の福長洋介医師はこう指摘する。大腸がんは比較的進行が早く、便に血が混じった状態を放置すると一気に進むという。

国立がん研究センターが昨年11月に発表した集計によると、令和2年の1年間に全国863の医療機関でがんの診断・治療を受けた件数の合計は前年比で約6万件減った。同年4月の政府の緊急事態宣言の発令後、各地の検診センターが閉鎖されたり、胃がん発見に欠かせない内視鏡検査が感染リスクが高いとして取りやめられたりした。こうした中、多くの人ががん検診を控え、がんが見過ごされていることが影響したとみられている。

同センター中央病院の島田和明院長は「新型コロナの感染はもちろん怖いが、がんで亡くなる人の方がずっと多い。検診を控えたことでがんを抱えていることに気づかないままでいる人が増えているとすればとても心配だ。仮に(新型コロナの感染流行の)第6波により一時的に検診ができなくなっても時期をずらし必ず受診してほしい」と話す。

来院せず転移

受診控えの動きは無症状の人が受けるがん検診だけでなく、がん切除術後に定期検査を求められていたがん患者らにも広がっている。

東京都内のがん専門病院によると、片方の乳房を切除した乳がん患者が経過観察期間終了後、反対側の乳房にしこりを感じたものの、感染を恐れしばらく放置しているうちにしこりが拡大。ようやく来院したときには新しいがんが全身の骨などに転移していたという。同じ病院で、膵(すい)管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と呼ばれる良性腫瘍を定期検査により経過観察していた患者がコロナ禍で来院しなくなり、この間に膵臓がんに変異した例もあった。

がん検診や他の病気の検査でがんの疑いを指摘された患者の間にも、精密検査を先延ばしにする人が増えているとみられている。

揺らぐ土台

日本対がん協会が集計しているがん検診受診者数によると、がんの発見数は令和2年4月の緊急事態宣言発令後に急減し、その後は翌年後半にかけ持ち直しの動きを見せていた。しかし、オミクロン株による感染の増加で受診控えの傾向が今後も続くのではないかとの懸念も浮上している。

米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンが先月発表したがん検診などの医療受診意識調査(日本国内の1万5000人が対象)によると、3~4年度に健康診断を受診しない予定の人に理由を尋ねたところ「健康状態に不安がないので必要性を感じていない」との回答が27・2%と過去の調査回答数を上回り初めてトップとなった。

がん研有明病院の佐野武院長は「これまで検診を欠かさず受けていた無症状の人が、コロナ禍を機に受診しなくなったとすれば気がかりだ。欧米に比べても優れている日本の5大がんの治療成績を支えてきたのは、約50%の高いがん検診受診率やこまめな病院受診の上に成り立っていた早期発見・治療のシステムだ。その土台が揺らぎかねない」とオミクロン株感染拡大の影響に警戒感をあらわにした。

「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日除く)午前11時~午後3時に受け付けます。電話は03・5531・0110、無料。相談は在宅勤務でカウンセラーが受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経新聞紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

会員限定記事会員サービス詳細