高校野球、近畿で唯一の優勝未経験 滋賀が頂点に立つ日は

平成13年夏の甲子園大会で準優勝し、盾を持って行進する近江ナイン。全国の頂点にあと一歩だった
平成13年夏の甲子園大会で準優勝し、盾を持って行進する近江ナイン。全国の頂点にあと一歩だった

第94回選抜高校野球大会(3月18日開幕)の出場校を決める選考委員会が28日に開かれる。昨年夏の甲子園大会では近畿勢が4強を独占。昨秋の地区大会覇者が集う明治神宮大会は近畿チャンピオンの大阪桐蔭が「秋の日本一」に輝いた。今年も近畿勢の躍進が期待されるが、この強豪ひしめく地域で唯一、全国の頂点に立っていないのが滋賀県勢。過去には屈辱も経験したが、甲子園常連校ともいえる近江を中心に力をつけている。

滋賀だけ…

春の選抜大会は八幡商が昭和32年に滋賀県勢初勝利を挙げた。一方、夏の選手権大会は53年の第60回大会で出場が各都道府県1校制になるまで、隣県の京都や福井との地区大会の厚い壁に阻まれ、甲子園進出もままならなかった。そのため夏の県勢初勝利は54年の比叡山。10度目の夏にして初の初戦突破は都道府県別では最も遅い1勝だった。

このとき3年生のベンチ入りメンバーで、指導者として県立北大津を春夏6度の甲子園に導き、現在は私学の彦根総合を率いる宮崎裕也監督(60)は「本当に勝たないといけないと思っていた」。ナインは前年春の屈辱を晴らそうと、力が入っていた。

学校やチームの魅力度アップを推進する彦根総合の宮崎監督
学校やチームの魅力度アップを推進する彦根総合の宮崎監督

屈辱とは53年春の選抜大会で前橋(群馬)のエース松本に達成された大会史上初の完全試合。洗濯係でチームに同行していた宮崎さんは「地元の大津の野球熱が高く、これでは無事には帰れないということで、親だけに連絡し、学校へは夜中に帰った。着くと逃げるように帰宅した」と振り返る。

三本の矢で決勝

滋賀県勢が最も頂点に近づいたのは平成13年夏の近江。竹内(後に西武)、島脇(後にオリックス)、清水の「三本の矢」といわれた継投で勝ち進み、県勢で初の決勝進出。相手は強豪の日大三(西東京)だった。

元年から近江を指導し、19度の甲子園を経験する多賀章仁監督(62)にとっては後悔の残る試合となった。五回まで2失点と好投していた先発の竹内に代わり、六回から島脇をマウンドに送った。「竹内でいけるところまでいくべきだった。継投しなくてはと自分で思い込んでいた」。継投策は通じず、七、八回に失点して2-5で敗れた。「まさかの決勝進出。大差の試合にならなければと思っていた。自分の弱気な部分が出た」。初の大一番で経験不足が出てしまった。

県勢はそれ以来、決勝に進んでいない。この現状を打破するため、宮崎さんは県全体のレベルアップが必要と力説する。「滋賀では四球やエラー、ミスをしても勝てる。ミスをしたら勝てない大阪などとの差。滋賀では頭ひとつ抜けた存在の近江を脅かすチームが多く出てこないと、甲子園に行っても勝ち切れない」。宮崎さんが北大津を率いて経験した甲子園では、県大会で苦しんだチームほどいい成績を残せたという。

選手の県外流出

多賀さんは中学生の有力選手の県外流出を指摘する。近畿の有力校のメンバーを見ると毎年、滋賀出身の選手が何人かいる。昨秋、大阪桐蔭の明治神宮大会優勝に貢献した1年生左腕の前田は滋賀県長浜市出身。中学時代は世界大会優勝を経験している。

有力選手を県内にとどめるためには、やはり甲子園でのアピールが必要。その意味では昨夏の甲子園2回戦で、優勝候補といわれた大阪桐蔭を撃破した試合は大きい。多賀さんは「大阪桐蔭戦を見た中学2年、1年の選手からの反響が大きい」と打ち明ける。

令和2年4月に彦根総合監督に就任した宮崎さんはチームの魅力づくりを進めている。選手の目標は甲子園だが、保護者にとっては卒業後の進路も学校選びの重要な要素だ。同校では「校内塾」を開設して部員の文武両道を促進。練習は午後6時半ごろに終え、食事の後、8時から1時間半、同校教員が学習指導する。国公立大、公務員など進路に合わせて4コースを設定。宮崎さんは「ほかの学校との差別化を図り、うちは年月をかけて野球強豪校でなく名門を目指したい」と話す。

昨夏の甲子園でベスト4に進出した近江は、先立つ春の県大会では3回戦で姿を消していた。「春は滋賀大会で負けたチームが夏は全国4強。滋賀のレベルは上がっているともいえるのでは」と多賀さん。湖国に優勝旗がやってくる日が迫っているのは確かだ。

今春、近畿勢最後のイスは

今春の選抜大会に近畿からは21世紀枠を除き、7校が出場する。一般枠の「6」に、秋の近畿大会を制した大阪桐蔭が明治神宮大会で優勝し、神宮枠「1」がプラスされた。

近畿大会優勝の大阪桐蔭、準優勝の和歌山東、ベスト4の金光大阪、天理(奈良)は当確。残りの3枠をベスト8組の近江、京都国際、東洋大姫路(兵庫)、市和歌山で争う。京都大会1位の京都国際、大阪桐蔭と善戦した東洋大姫路は有力で、最後のイスは地域性では滋賀3位の近江、県大会成績重視なら和歌山1位の市和歌山になり、際どい争いになりそうだ。

全国で14県

春夏通して甲子園優勝経験のない都道府県は滋賀をはじめ、青森、岩手、秋田、山形、宮城、福島、新潟、富山、石川、山梨、鳥取、島根、宮崎の14県。最近では平成27年春に敦賀気比の福井、21年春に清峰の長崎、16年夏に駒大苫小牧の北海道が「優勝未経験県」を卒業した。(鮫島敬三)





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