シネマのまちのつくり方~なら国際映画祭

①若手監督を発掘、メジャーデビューへの道

第6回なら国際映画祭(2020年)は異例の開催となった。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、対面とオンラインの併用で実施されたからである。どの監督にナラティブ作品を制作するチャンスを与えるか、映画祭側で審査し白羽の矢を立てたのが、学生部門で観客賞を受賞した村瀬の企画だったというわけである。

同映画祭関係者によると、村瀬は「幸運に恵まれた」監督とされる。予定通りの時期に大学の卒業作品『ROLL』を仕上げた。なら国際映画祭の学生部門の本来の応募期間を過ぎていたが、新型コロナウイルス感染拡大のために、映画祭の出品受付期間が延びたことで、同作品は応募締め切りに間に合ったからだ。

学生部門からナラティブ監督が選ばれたのは今回が初めて。幸運を生かせるかどうかは今後の村瀬の手腕にかかっている。村瀬は「プレッシャーはない。僕を選んだ方々は『好きなことをやっていい』と言ってくださった。だから好きなことをやる。駄目だったら、選んだ人が悪いぐらいの強い気持ちで臨む。頑張ります」と筆者に率直に語った。

◆国際的な評価

改めて「ナラティブ」プロジェクトの意義を説明したい。なら国際映画祭は2010年に始まり、隔年で実施されてきた。ナラティブ部門は初回前年の09年に監督2人を選んで撮影され、第1回映画祭で上映した。以降、毎回の映画祭で「ナラティブ」監督を選び、翌年に新作を撮影してきた。

学校を卒業したばかりのキャリアの浅い若手や学生たちは「新しい映画をつくりたい」と切望している。しかし資金調達が高い壁として立ちはだかる。「監督」になるためには通常、映画のスタッフとして一定の経験を積み、才能や志のある者だけが「監督」として生き残る。そして作品を撮るにあたっては、プロの助監督や制作、カメラマンに依頼することが必要な場合もある。

こうした困難のなか、同映画祭の「ナラティブ」は若手をバックアップしてきた。「ナラティブ」のエグゼクティブプロデューサーは世界に知られた河瀨直美なので、新進の監督にとって資金調達や映画宣伝の面で利点がある。奈良で自作の映画を撮って世界の映画祭に挑むことができるのだ。

これまでの「ナラティブ」監督と作品名は次の通り。(撮影は前年にすべて奈良県内で行われた)

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