天皇陛下、交流再開願われ 皇居で「歌会始の儀」

天皇、皇后両陛下、皇族方が出席されて行われた「歌会始の儀」=18日午前10時36分、宮殿・松の間(代表撮影)
天皇、皇后両陛下、皇族方が出席されて行われた「歌会始の儀」=18日午前10時36分、宮殿・松の間(代表撮影)

新年恒例の「歌会始の儀」が18日、皇居・宮殿「松の間」で「窓」をお題に行われた。天皇、皇后両陛下と秋篠宮さま、次女の佳子さまのお歌、一般応募の1万3830首(選考対象)の中から入選した10人の歌などが古式ゆかしい節回しで披露された。両陛下の長女、敬宮(としのみや)愛子さまも成年皇族として初めてお歌を寄せたが、学業を優先するため参列を控えられた。天皇陛下のお招きで歌を詠む召人(めしうど)は、文芸評論家の菅野昭正さん(92)が務めた。

儀式では歌を詠む役に加え、宮内庁は入選者や召人らにも事前にPCR検査や抗原検査受検に協力するよう求めた。歌を詠み上げる際の飛沫(ひまつ)拡散を防ぐため、詠む役はフェースシールドを着用し、周囲にアクリル板を設置するなど、新型コロナウイルスの感染防止対策を徹底して行われた。

宮内庁によると、陛下はコロナ禍で海外との往来ができない状態が続いていることに触れ、感染症が収束して人々の交流が再開できる日が来ることを願う気持ちを詠まれた。皇后さまは昨年9月、上皇ご夫妻が約26年間お住まいになった皇居・御所に移り住み、ご夫妻への感謝の気持ちを新たにしつつ、目にとまった御所周辺の緑を表現された。

秋篠宮さまは、新型コロナの感染拡大で学校の授業や部活動に影響が出ていた時期を思い返し、子供らが元気に走り回る姿を見て安心した気持ちを詠進された。愛子さまは、学習院女子高等科2年生だった平成30年夏、英国・ロンドン郊外にあるイートン校のサマースクールに参加した際、初めて海外の学校を訪問して世界が開けていくように感じた気持ちを詠まれている。

天皇、皇后両陛下と皇族方のお歌、入選者らの歌は以下の通り。(仮名遣い、ルビは原文のまま)

天皇陛下

世界との往き来難(がた)かる世はつづき窓開く日を偏(ひとへ)に願ふ

皇后陛下

新しき住まひとなれる吹上の窓から望む大樹のみどり

秋篠宮さま

窓越しに子ら駆け回る姿を見心和みてくるを確かむ

敬宮(としのみや)愛子さま

英国の学び舎に立つ時迎へ開かれそむる世界への窓

秋篠宮家次女佳子さま

窓開くれば金木犀の風が入り甘き香りに心がはづむ

常陸宮妃華子さま

幼子は新幹線の窓に立ち振りむきもせず川ながめゐる

寬仁親王妃信子さま

成人を姫宮むかへ通学にかよふ車窓の姿まぶしむ

三笠宮家彬子さま

蛍光灯映る窓辺に思ひだす大正帝の螢雪の苦を

高円宮妃久子さま

車窓より眺むる能登の広き海よせくる波は雪降らしめつ

高円宮家長女承子さま

コロナ禍に換気もとめて閉ぢぬ窓エアコン眺めてしばし案ずる

【召人】

菅野昭正さん

きはやかに窓に映えたる夕虹は明日の命の先触れならむ

【選者】

篠弘さん

一本のザイルたぐりて窓を拭く岩場をこなす若者の腕

三枝昂之(さいぐさ・たかゆき)さん

夕映えの町が暮らしの町となり窓にひと日の灯が点りゆく

永田和宏さん

閉ざすとき窓に光の残りゐて呼べど応へぬ人ありわれに

今野寿美さん

廃校の窓の下にもこの春の花あり土地の人が植ゑにき

内藤明さん

まづ窓の位置を決めたり夏の夜に父と作りし模型の小部屋

【入選者】(年齢順)

富山県 西村忠さん(85)

剱岳三ノ窓より朝日さし富山平野に田植はじまる

福岡県 高木典子さん(84)

海を見るうしろ姿の絵のありて時をり共にその窓に立つ

福岡県 田久保節子さん(81)

柿わかばきらめくまひる窓あけて天道虫を風に乗せやる

香川県 藤井哲夫さん(78)

出来た子もそれなりの子も働いて働きぬいて今日同窓会

東京都 三浦宗美(そうび)さん(68)

夫逝きて十年(ととせ)を過ぎし今もまだ窓のそとには灰皿のある

青森県 高橋圭子さん(60)

斜陽館に少しゆがんだ窓ガラス津島修治も見てゐたはずの

東京都 川坂浩代さん(55)

パソコンの小さき窓にそれぞれの日常ありて会は始まる

茨城県 芳山三喜雄さん(49)

ベランダに鯉幟ゆれる窓を指し君は津波の高さ教へる

東京都 伊藤奈々さん(41)

窓を拭く人現れてこの場所がほぼ空だつたことに気が付く

新潟県 難波來士(らいと)さん(16)

窓の外見たつて答へはわからない少し心が自由になれる

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