九州・山口新春インタビュー

村上英之・西日本フィナンシャルHD社長

インタビューに答える西日本フィナンシャルホールディングスの村上英之社長
インタビューに答える西日本フィナンシャルホールディングスの村上英之社長

昨年を総括すると、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ景気の持ち直しの動きがやや足踏みしたという経済状況だった。

西日本フィナンシャルホールディングス(FH)の業績は、一昨年にコロナ関連融資がかなり伸びた影響で、貸出金利息が安定的に推移した。株式市場も堅調だったことから投資信託の販売など預かり資産関連ビジネスが好調だった。

現在の中期経営計画で大きなテーマに掲げている法人役務手数料の増収と有価証券運用力の強化も比較的うまくいった。数字が良かったということに加えて、中計などで掲げた戦略が結果につながっているという手応えを感じている。

新型コロナの感染拡大が始まった一昨年以来、財政支出や金融施策、コロナ関連融資など支援策が効果を発揮して緊急事態を乗り切ってきた。これから1~2年後にかけて本格的に融資の返済や金利負担が始まる。それまでにビジネスモデルを立て直す必要がある取引先は多い。それをいかに実践できるか。伴走型の企業支援を徹底していく。

× × ×

オミクロン株の拡大や中国経済の減速が懸念材料ではあるが、個人消費や自動車などの生産、輸出は昨年後半から引き続き、今年も強いだろう。設備投資も、しばらく抑えられてきた反動に加え、新たなテーマである「カーボンニュートラル」に向けた投資もじわりと出てくるのではないか。九州ではTSMC(台湾積体電路製造)の熊本新工場など半導体関連の設備投資が今後しばらく活況だろう。

西日本FHにとって今年の大きなテーマはデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速とESG(環境・社会・企業統治)金融の具体化だ。

DXに関しては、本部に15人の専門スタッフを擁する部隊を設けて、顧客のデジタル化をサポートしている。関連業種の13社とも連携して、提供可能なシステムの導入提案も行っている。

専門人材の育成も重要だ。平成30年4月からデジタル化による業務革新を中心に人員を捻出する作業を始めた。数字上は800人以上分の仕事を減らすことができ、新たに150人をデジタルや法人ソリューションなどの分野に移し替えた。これからの銀行員にとってある程度のデジタル知識は基礎的素養として必須だ。組織全体でデジタル人材化していかなければいけない。

昨年発表した九州リースサービスのグループ会社化で大きな判断要素となったのがESGだ。環境負荷の軽減や投資額抑制などのメリットがあるリースへのニーズは今後、相当高まるはずだ。九州リースの収益を取り込み、グループ総合力を高める。

× × ×

銀行法の改正によって、銀行の業務範囲規制が緩和された。人材派遣、システム販売、広告などできることは増え、前向きに検討はしていくが、正直、収益の大きな柱になるかというとなかなか厳しい。

新しい事業を立ち上げるときに考えなければいけないのは、少なくとも黒字化させることと、それが顧客や地域のためになる取り組みなのかということだ。例えば福岡の場合、多くの事業者が盛んにいろいろなサービス提供を競っている。われわれが自らやらなければいけない仕事があるのかないのか、よく見なければいけない。

地方銀行の再編については、われわれは常にオープンで、いい話があれば検討するという姿勢に変わりはない。ポイントは経営、財務基盤の強化につながるか、本当に地域にとっていいことなのかということだ。

ただ、銀行同士の再編にこだわらず、いろいろな業種と連携してできることがあるのではないかと思っている。厳しい環境ではあるが、慌てて再編しなければいけないという経営基盤ではなかろうとは思っている。

社長に就任して半年あまり。社内外の声をしっかり聞いて、それを虚心坦懐(たんかい)に受け止めて判断することをポリシーの1つにしている。今年もたくさんのお客さまのところに伺い、いろいろな話を聞きたいと思っている。(小沢慶太)

むらかみ・ひでゆき 昭和36年3月、大分県生まれ。九州大学経済学部卒業後、58年に西日本相互銀行(現西日本シティ銀行)に入行。常務執行役員総合企画部長、取締役専務執行役員、西日本フィナンシャルホールディングス取締役執行役員などを歴任し、令和3年6月から現職。


会員限定記事会員サービス詳細