原材料高で悪い物価上昇 大規模緩和修正求める声も

日本銀行本店
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日本銀行が18日に示した消費者物価上昇率の見通しは令和4、5年度ともに1・1%にとどまり、目標に掲げる2%は当面届かないとの考えを示した。ただ、足元では輸入コスト上昇が企業を圧迫し、原因の一端である円安の是正に向け今後は大規模金融緩和の修正を求める声が強まりかねない。国内経済が停滞する中で景気を冷やす政策金利の引き上げは難しく、日銀は板挟みになる懸念がある。

「任期と合わせて正常化を議論するつもりはない。〝出口〟の議論ができる状況ではない」-。日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は18日の記者会見でこう述べ、来年4月までの任期中に物価上昇率2%を達成し大規模緩和の手じまいを始めるのは難しいとの認識を明らかにした。

だが、新型コロナウイルス禍の原材料価格高騰で、企業同士の取引価格を示す令和3年の国内企業物価指数は比較可能な昭和56年以降で最大の伸び率を記録した。早ければ3月にも利上げを始める米国とマイナス金利を続ける日本との金利差が広がることで円安が進めば、輸入コストの増大で物価上昇率は一時的に2%に迫るとの見方もある。

デフレ意識が根強い国内では企業がコストを負担し小売価格への転嫁が遅れていたが、日銀の生活意識アンケート(昨年12月調査)では7割超が1年前に比べ物価が「上がった」と回答し、生活のゆとりが損なわれ始めている。こうした「悪い物価上昇」は、大規模緩和を維持する日銀への風当たりを強めかねない。

一方、日銀は簡単には政策修正に踏み切れない。足元の物価上昇は輸入コスト高という外圧が原因で、日銀が思い描く景気回復と賃上げが消費を回復させ物価を引き上げる〝好循環〟とは異なるからだ。この状況で大規模緩和を縮小すれば、景気を冷やしコロナ禍からの回復基調を妨げる。

また、政府は日銀の低金利政策を前提に、コロナ禍でも財源をほぼ国債に頼った大型の経済対策を重ねてる。金利上昇は国債の利払い費増加につながるため、財政を逼迫(ひっぱく)させかねない。

身動きが取れない日銀だが、今回の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では物価見通しの表現を「おおむね上下にバランスしている」と変更した。市場関係者の間では、物価上昇への警戒感と将来の政策修正を示唆して円安を牽制(けんせい)したとの見方も出ており、政策修正を表向き封印した日銀と市場の〝心理戦〟が始まる可能性がある。

(高久清史)

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