アルツハイマー病の新薬「アデュカヌマブ」が、何かと話題だ。
日本の製薬大手エーザイと米バイオ医薬品大手バイオジェンが開発した。認知症の根本原因に働きかけて進行を抑える初の薬として登場に期待がかかった。
だが、日本、欧州、米国の扱いは分かれた。日本と欧州はいずれも昨年暮れ、承認を見送った。メーカーが当局に提出した治験の結果は2種類。一方では有効性が示されたが、もう一方では示されず、厚生労働省の専門部会は「結果に一貫性がない」とした。つまり、効果がよく分からない、というのだ。今後、新しい治験結果が出れば再度審議するという。
米国では昨年6月、米食品医薬品局(FDA)が迅速承認した。しかし、使用が広がっていない。
皆保険の日本と違い、米国では、薬が承認されても誰でも使えるわけではない。個々人が加入する保険会社などが、使用の可否を決める。アデュカヌマブを採用した保険会社は少ないようだ。
背景には、効果が明確でなくFDAが承認にあたって追加の試験を義務付けたことや、価格が高く医療保険財政を揺るがす懸念があるのだろう。
メーカーは昨年暮れ、電撃的に価格を引き下げた。平均的な患者で年間5万6千ドル(約640万円)だったのが、今年1月から2万8200ドル(約320万円)になった。