「千年に1度」の噴火 「気温低下の恐れも」と専門家

トンガ沖の海底火山噴火は噴煙の高さが20キロを超えたとされる(共同)
トンガ沖の海底火山噴火は噴煙の高さが20キロを超えたとされる(共同)

「千年に1度」とされる南太平洋・トンガ沖で起きた海底火山噴火は噴煙の高さが20キロを超えたとされる。被害の全容は明らかでないが、その規模は世界的な異常気象につながったフィリピン・ピナトゥボ山の噴火(1991年)に次ぐものだったとの見方もある。同噴火が2年後に日本にもたらした記録的冷夏が米の凶作につながったとされるが、今回はどこまで影響が広がるのか。

報道によると、トンガ国内では最大8万人が噴火や津波の影響を受けたとみられる。現地では火山灰が降り積もり、水が汚染されているとされるが、被害の詳細が分かるまでには時間がかかりそうだ。

噴煙の高さが20キロを超えたとされる点に注目するのは、立命館大環太平洋文明研究センターの高橋学特任教授(災害史)だ。「噴出物が上空10キロ以上の成層圏に達すると地表に落下せずに漂い、地球上を薄く覆う。傘のように太陽エネルギーを遮る『パラソル効果』となって、世界的に気温が低下するおそれがある」と指摘する。

高橋氏の念頭にあるのは、1991年6月に起きたフィリピン・ルソン島にあるピナトゥボ山の噴火だ。この噴火は20世紀で最大規模といわれ、数百人の死者が出たものの、避難指示が的確で数万人の命が救われたとされる。

ただ影響は大きく、大量に放出された噴出物が太陽エネルギーを遮ったため、世界的に気温が低下し、冷夏による農業被害が深刻化。日本では2年後の93(平成5)年に米不足が起き、「平成の米騒動」とも呼ばれた。タイ米などを緊急輸入する事態となったことを覚えている人も多いだろう。

冷夏による米不足で緊急輸入され、倉庫に積まれたタイ米=平成5年12月
冷夏による米不足で緊急輸入され、倉庫に積まれたタイ米=平成5年12月

「パラソル効果による寒冷化で、数年内に世界的な食料危機も想定される」と高橋氏。「特に火山灰や火山ガスが豪州に流れた場合、日本が輸入する小麦が不作となる。食料自給率が低い日本も打撃を受けるだろう」と懸念を示す。

一方、京都大防災研究所の井口正人教授(火山物理学)は「現時点では火山灰の総量はそれほど多くないと思われる」と分析。ピナトゥボ山の噴火ほど影響は広がらないのではないかとの見方を示し、「気候変動の議論をするのは時期尚早だ」とする。

また、現地では噴火によって大量の軽石が発生している可能性がある。日本では昨年8月に小笠原諸島の海底火山が噴火し、漂流した軽石により各地で漁業などに大きな影響が出た。

井口氏は「オーストラリアなどの南太平洋には(軽石の)影響があるかもしれない」としつつも、海流の関係から「日本には軽石は来ないはずだ」と述べた。

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