昭和の時代、無名の小さな駅や町がテレビ番組やCMの舞台となり、全国区になることがよくあった。昭和48年にNHK番組で取り上げられた国鉄広尾線の幸福駅(北海道)は、近くの愛国駅とリンクした「愛国から幸福行き」の切符が縁起がいいと一大ブームになり、芹洋子さんが歌う「愛の国から幸福へ」という曲も発売されるほどだった。
幸福駅ほどではなかったが、同じ北海道の宗谷本線にある比布(ぴっぷ)駅も有名になった。きっかけは55年から放送された家庭用磁気治療器ピップエレキバンのCM。駅名と商品名の「ぴっぷ」つながりだった。
CMは駅のホームに女優の樹木希林さんと製造会社の横矢勲会長が立っている場面から始まる。会長が「ピップ」と言いかけると列車が音をたてて通過。通り過ぎた後、会長の「聞こえた?」という問いに樹木さんが「ううん、何にも」と答える内容だった。コミカルなノリで大人気となり、駅や地元の比布町には観光バスが押し寄せ、駅の入場券が1日千枚以上売れることもあったという。