主張

施政方針演説 安保の説明に熱量足りぬ

新型コロナウイルス対応や「新しい資本主義」の実現を語るのと同じくらいの熱量で、岸田文雄首相が語るべきだったテーマがある。

国民の命と日本の繁栄にかかわる外交安全保障問題のことだ。

通常国会が召集され、岸田首相が就任後初の施政方針演説を行った。

コロナ感染は急拡大している。十分な医療を受けられずに自宅で亡くなる人が相次いだ第5波の轍(てつ)を踏んではならない。命と健康を守りつつ、経済・社会活動への影響をできるだけ抑える難しいかじ取りを成功させてほしい。

岸田首相は演説で、スピード感をもってコロナ対応を決断してきたと振り返り、「判断の背景をしっかり説明する努力をしてきました」と語った。

だが、ワクチンの3回目接種はもたついている。もっとアクセルを踏むべきだ。

政策判断の背景を首相が語るのは極めて大切で、それはコロナ対応に限らない。

施政演説で、日米同盟の「抑止力・対処力を一層強化」と表明したのは評価できる。昨年12月の所信表明演説に続き、敵基地攻撃能力検討や防衛力の抜本強化の方針を語った。必ず実現させてほしいが、岸田首相にはこれらの安保面の努力が必要な理由を国会で丁寧に語ってもらいたい。

林芳正外相は外交演説で「台湾海峡の平和と安定の重要性」を指摘したが、岸田首相は触れなかった。外相任せにしていい問題ではない。台湾の安全は南西諸島防衛と連動すると説くべきである。

北朝鮮は17日、今年4回目の弾道ミサイル発射を行った。これを受けて岸田首相は自民党両院議員総会で、ミサイル防衛などの「備えができているのか問いかけ、国家安保戦略はじめ外交安保の議論を進めていかねばならない。強い危機感を感じる」と語った。

施政演説では「(北の)ミサイル技術の著しい向上を見過ごせない」と述べたが、事態の深刻さは国民に伝わらないだろう。

岸田首相はもっと具体的に語ったらどうか。北朝鮮の新型ミサイルが飛ぶ高度が低すぎて、海上自衛隊イージス艦の迎撃ミサイルでは撃墜が極めて困難になった現状や、南西諸島・台湾方面の中国の軍事的圧力の高まりを説き、抑止・対処には敵基地攻撃能力も欠かせないと説明するときである。

会員限定記事会員サービス詳細