「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

トラの4番戦争は大山か、佐藤輝か…勝者にはサードポジションを!

昨年9月の対巨人戦でサヨナラ本塁打を放ち、ナインに迎えられる阪神・大山悠輔
昨年9月の対巨人戦でサヨナラ本塁打を放ち、ナインに迎えられる阪神・大山悠輔

大山か、佐藤輝か-。4番戦争の勝者にサードを与える〝ボーナス〟を贈ってはいかがですか-。いよいよ2週間後の2月1日、12球団は春季キャンプをスタートさせます。阪神は1軍が沖縄・宜野座、2軍は高知・安芸でキャンプインを迎えますが、ここ数年と様相が違うのは4番構想ですね。矢野阪神の過去3年間では初年度の2019年が大山、20年は新外国人ボーア、昨季は大山に期待し、キャンプインの時期には4番構想が浮かび上がっていました。しかし、今季は大山悠輔内野手(27)か、佐藤輝明内野手(22)なのか-を首脳陣は誰も明言していません。どちらかが結果で3月25日開幕戦4番の座を奪い取るならば「勝者」にふさわしい立場を確立すべきかもしれません。

■手探り状態の「4番構想」

いよいよ2週間後、プロ野球の元旦である春季キャンプを迎えます。22年のペナントレース開幕は3月25日。阪神は昨季にリーグ優勝、日本一にも輝いたヤクルトを京セラドームに迎えての3連戦です。昨季も開幕カードはヤクルトでした。敵地・神宮球場での3連戦で、阪神は3連勝を飾っています。同じようにヤクルトをやっつけ、開幕ダッシュに成功するのか-。3・25に向けて、春季キャンプからオープン戦での各選手の調整やチームとしての仕上がりをじっくりと観察していきたいと思いますね。

矢野燿大監督(53)も今季が就任4年目。勝負の年でもありますし、また監督自身も「今年こそは」と17年ぶりのリーグ優勝に燃えていると思います。こうした状況の中で、阪神の関係者やOBたちが異口同音に話している言葉があります。それは「手探り状態や」という言葉です。

何が手探りなのか。答えは阪神ファンの方々ならすぐに分かるでしょう。大ざっぱに言うなら「2022・打線構想」ですし、端的に表現するなら「2022・4番構想」でしょう。矢野監督の就任初年度の19年(69勝68敗6分けの3位)の開幕スタメン4番は大山でした。就任2年目の20年(60勝53敗7分けの2位)は新外国人のボーア。そして、昨季(77勝56敗10分けの2位)は再び、大山でしたね。それも春季キャンプが始まる2月1日の時点では「今年の4番は〇〇や」というムードというか、首脳陣の意思がクッキリと見えていましたね。2年前の宜野座ではボーアが柵越えを連発し、最強4番の出現にキャンプ地は狂喜乱舞。「今年こそ優勝や!」と大騒ぎしたことを昨日のことのように思い出します。

ところが、今季は2・1キャンプインを迎えようとするこの時期にきても、矢野監督ら首脳陣から「4番構想」が聞こえてきませんね。うっすらと「大山に期待したい」という声は漏れ伝わってきますが、それでも「4番は大山で決まり」という強いトーンは響いてきません。

理由は簡単です。4番でスタートした大山の昨季の成績が満足できるものではなかったからです。129試合に出場して、打率2割6分、21本塁打、71打点。4番以外でのスタメン起用での成績ならば、誰からも文句は言われない数字ですが、他球団の4番との比較論で見るならば…。

優勝したヤクルトの4番・村上は143試合出場で打率2割7分8厘、39本塁打、112打点。巨人の4番・岡本和真は143試合出場で打率2割6分4厘8毛、39本塁打、113打点。広島の鈴木誠也が132試合出場で打率3割1分7厘、38本塁打、88打点。巨人の岡本和は本塁打王、打点王の2冠ですし、村上も本塁打王、鈴木誠は首位打者です。

打線の中心軸である4番の成績として見るならば、大山は物足りない。さらに得点圏打率2割5厘という数字が勝負弱さを際立たせています。昨季のシーズン終盤に4番から外されていたこともあり、今季の虎の4番は「大山だ!」といわれても、阪神ファンの大方の人は「それで大丈夫か」となるでしょう。

かといって、ない袖は振れません。チームの中で大山以外に「4番候補」はいるのか…。可能性として浮上しているのは今季が2年目の佐藤輝でしょうね。実際、このコラムでもV逸が決まった昨年10月26日の中日戦(0対4)の敗戦直後のコラム(10月31日アップ・矢野阪神、来季の重要課題は「4番打者問題」)で、大山4番の物足りなさを指摘し、新たな4番候補として佐藤輝の名前を挙げました。

佐藤輝は昨季、126試合に出場して打率2割3分8厘、24本塁打、64打点。前半戦はすごいペースで本塁打を量産しながら、中盤から打撃不振に陥り、59打席ノーヒットの記録も…。竜頭蛇尾の成績でしたが、それでも前半戦の破壊力がシーズンを通じて発揮できるならば、十分に虎の4番を任せられる人材だと思ったから、名前を挙げたのでした。

では、チーム内の4番レースに勝つのは大山なのか佐藤輝なのか…。まさに2月1日の春季キャンプスタートから4番戦争のゴングが打ち鳴らされ、キャンプ期間中の練習試合(2月8日、11日が日本ハム戦、12日、19日が楽天戦、20日が中日戦、23日が広島戦)、そして2月26日から始まるオープン戦(初戦は中日戦=北谷)で打撃結果を残した方が4番の座に近づくのではないでしょうか。

■4番にはサードポジションをボーナスに

そして、4番戦争に勝ち残った方に「チームの中心軸」という自覚を植え付ける意味でも、チームとして戦う態勢を明確にする上でも、その立場を確立させるべきだと思います。4番打者となった方がサードも守る-というボーナスを付与してはどうでしょう。

勝者に4番サードを任せて、22年の矢野阪神は「これで戦うんだ」というメッセージをチーム内外に示すならば、17年ぶりのリーグ優勝に向けての追い風が吹くと考えます。

もちろん、大山にも佐藤輝にも「4番奪取」に向けての課題が横たわっていますね。まず大山-。阪神OBの一人はこう話します。

「狙っていないボールにも手を出して、情けない姿の凡退が多い。まず狙い球をしっかり決めて、強い気持ちで向かっていくこと。それに打者には好不調の波はあるものだが、不調の際にバックスイングが大きすぎる。結果として投球に差し込まれてしまう」

一方の佐藤輝には-。これも別の阪神OBは…。

「まずボール球を打たないこと。肩のラインからひざ下まで振り回し、内外角のゾーンも広すぎる。あれだけボールを振れば、タイミングの取り方とか、スイング軌道とか…の問題ではない。ボールを振らなければ自然と数字は残る」

指摘すれば簡単に聞こえますが、誰が聞いても「なるほど」と思うことができなかったからこそ、昨季の成績が残っているのです。

大山か、佐藤輝か-。はたまた彗星(すいせい)のごとく、別の打者が4番を奪取するのでしょうか。矢野監督が3・25のスタメン4番に書き込むのは誰か…。4番戦争はすでに始まっているのかもしれませんね。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。


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