感染拡大 疲弊する保健所 自宅療養中心 観察業務が増

国立感染症研究所が分離した、新型コロナウイルスのオミクロン株の電子顕微鏡写真(同研究所提供)
国立感染症研究所が分離した、新型コロナウイルスのオミクロン株の電子顕微鏡写真(同研究所提供)

感染力の強い新型コロナウイルス新変異株「オミクロン株」の感染拡大に各地の保健所が翻弄されている。重症者が少なく自宅療養が中心となり、保健所の健康観察業務が増加。都内の保健所では感染拡大第5波を教訓とした応援態勢などを敷く一方、感染者数が5波を超えた沖縄や広島では、濃厚接触者などを調べる「積極的疫学調査」の一部を取りやめる事態に。急増する感染者を前に、重症者を取りこぼさない態勢づくりが求められている。(永井大輔、内田優作)

5波の教訓生かし

「第5波のピークを越えつつある」。東京都江戸川区健康部の天沼浩部長はこう危惧する。区は5波の教訓を踏まえ、事前に感染爆発を想定した保健所への応援態勢を構築。感染者数に応じて後方支援の職員を派遣し、保健師が重篤な患者の調査に専念できる環境を作った。派遣する職員の名簿を作り、業務説明の動画も配信。天沼部長は「感染症対策は医療危機管理であり、参集計画が重要。5波の教訓を踏まえた計画で、非常に落ち着いて対処できている」と話した。

同区では5波のピーク時の約2倍にあたる人員を即座に参集できる態勢を作っているが、7日から15日にかけ、1週間平均の感染者は約10倍と急増しており、予断を許さないという。

聞き取り一部中止

一方、5波を超える感染急拡大を迎えた那覇市では業務が逼迫(ひっぱく)し、9日から、濃厚接触者や感染経路を調べる積極的疫学調査の一部を取りやめている。

那覇市の新規感染者は元日は7人だったが、8日は400人に到達。市保健所は他部署の職員を動員するなどしたが、積極的疫学調査が追い付かず、9日から感染者本人に濃厚接触者の判断と外出自粛などの呼びかけを依頼する異例の事態となった。

市の担当者は「まずは感染者本人の対応に注力せざるを得ない。負担をかけて申し訳ないが、理解してほしい」と話している。

沖縄と同様、蔓延(まんえん)防止等重点措置が適用されている広島市は、発症からさかのぼって2週間としていた行動履歴の聞き取りを2日間に短縮。オミクロン株の発症までの潜伏期間が短いことを受けた対応で、感染経路の推定よりも濃厚接触者の調査に重点を置き、感染拡大に歯止めをかけたい狙いがある。

増え続ければ…

こうした積極的疫学調査の縮小は、これまでもあった。5波ピークの昨年8月、東京都は各保健所に調査を「効果的かつ効率的に実施」するよう通知し、医療機関や高齢者施設関係者を優先して保健所の負担を減らそうとした。

どれだけ縮小しても、陽性確認直後の感染者の体調確認を省くことはできない。陽性が判明した人には保健所が携帯電話のショートメッセージなどを送り、必要な情報を入手するが、返信がなければ保健所から電話をかける必要がある。東京都文京区の保健所担当者は「人が足りず、遅いときは午後10時を回ってしまう。深夜に連絡するわけにはいかず、このまま感染状況が悪化すれば、作業が翌日に回ることもあるかもしれない」と語る。

実際、江戸川保健所では5波のピーク時、本人への最初の連絡に最大で4日かかったこともある。

オミクロン株は重症化しにくいとされるが、軽症の自宅療養者が増えれば保健所の業務は増える。宿泊療養や入院の場合、健康観察は現地で行われるが、自宅療養は原則、保健所が対応するためだ。天沼部長は「軽症者が目立つとはいえ、感染者が増えれば増えるほど、その中から重症化しやすい患者を見つけて治療につなげるまでの時間も増える。決して楽観はできない」と危惧した。

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