一 はじめに
今、わが国は、オミクロン株の感染急拡大に直面しています。
まず、新型コロナに感染し、苦しんでおられる方々にお見舞いを申し上げます。
また、長期にわたり、新型コロナとの闘いにご協力いただいている国民の皆さんに、心から感謝申し上げます。
そして、新型コロナ対応の最前線におられる、自治体、医療機関、介護施設、検疫所、保健所などのエッセンシャルワーカーの皆さんに、深く、感謝申し上げます。
岸田政権の最優先課題は、新型コロナ対応です。しかし、政府だけで対応できるものではありません。
国民皆で助け合い、この状況を乗り越えていきたいと思います。引き続き、皆さんのご協力を、お願いいたします。
(コロナ後の新しい日本を創り上げるための挑戦)
内閣総理大臣に就任してから、国内外の山積する課題に、スピード感を持って、決断を下し、対応してきました。
「行蔵(こうぞう)は我に存す」
それぞれの決断の責任は、自分が全て負う覚悟で取り組んでまいりました。
その際、皆さんの声に丁寧に耳を澄まし、状況が変化する中で、国民にとってより良い方策になるよう、粘り強く対応し、判断の背景をしっかり説明する努力をしてきました。
このように、「信頼と共感」の政治姿勢を堅持しつつ、まずは、新型コロナに打ち克(か)つことに全身全霊で取り組んでまいります。
新型コロナという困難に直面しているからこそ、立ちすくむのではなく、皆で協力しながら、挑戦し、コロナ後の新しい日本を創り上げていこうではありませんか。
二 新型コロナ対応
(新型コロナ対応の基本的な考え方)
オミクロン株による感染が拡大しています。
国民の皆さんの、またか、いいかげんにしてくれ、もう限界だという声を、私自身、聞いてきました。しかし、新型コロナという見えない敵は、想定以上に手ごわいことを、改めて認識しなければなりません。
昨年、わが国は、ワクチン接種など、国民一丸となった取り組みにより、デルタ株を何とか押さえ込むことができました。そこに、すかさず、変異株が現れました。ウイルスの怖さを改めて感じます。
ただし、新しい変異株の可能性は、専門家からも指摘されてきました。
私自身、総理に就任したときから、デルタ株を超える強力な変異株が現れる、そうした最悪の事態を想定して、万全の体制を整えるべく、政府を挙げて、取り組んできました。
先般の補正予算では、医療体制の拡充、ワクチン接種の推進や経口薬の確保、さらには、仕事や暮らしを守り抜くための支援策を盛り込んでいます。
もちろん、新型コロナには未知のことも多く、全てを見通した上で判断を行えるわけではありません。
私としては、専門家の意見を伺いながら、過度に恐れることなく、最新の知見に基づく対応を、冷静に進める覚悟です。
また、一度決めた方針でも、より良い方法があるのであれば、躊躇(ちゅうちょ)なく改め、柔軟に対応を進化させていく所存です。
国民の皆さん、今一度、ご協力いただき、共に、この国難を乗り越えていこうではありませんか。
具体的な対応について申し上げます。
(オミクロン株への対応)
これまで政府は、G7(先進7カ国)で最も厳しい水準の水際対策により、海外からのオミクロン株流入を最小限に抑えてきました。
この対策により、3回目のワクチン接種の開始、無料検査の拡充、経口薬の確保、医療提供体制の充実など、国内感染の増加に備える時間を確保できました。
当面の対応として、2月末まで、水際対策の骨格を維持します。
その上で、今後は、国内対策に重点を置きます。少しずつ明らかになってきたオミクロン株の特性を踏まえ、メリハリをつけた対策を講じていきます。
専門家から、オミクロン株について、感染力が高い一方、感染者の多くは軽症・無症状であり、重症化率は低い可能性が高い、高齢者等で急速に感染が広がると、重症者が発生する割合が高くなるおそれがある、といった分析が報告されました。
こうした報告も踏まえ、重症者や中等症の患者、あるいは、そのリスクが高い方々に、的確に医療を提供することに主眼を置いて、医療提供体制を強化します。
私から各自治体に、自己点検を依頼し、医療提供体制の確保に万全を期すよう要請しました。
即応病床数の確保は順調に進んでいます。
また、今後重要となる在宅・宿泊療養に対応する地域の医療機関を、全国1・6万、「全体像」の計画をさらに3割上回る体制を準備できました。
陽性と判断されれば、直ちに健康観察や訪問診療を実施するとともに、必要な方へのパルスオキシメーターの迅速なお届け、経口薬へのアクセスの確保を徹底します。
稼働状況の「見える化」を強化し、これらをしっかりと動かしていきます。
その上で、感染が想定を超えて急拡大し、重症者の絶対数の増加が生じたときに、病床が逼迫(ひっぱく)するような緊急事態に陥ることは、何としても避けなければなりません。
この観点から、先進諸国の取り組みを参考にしながら、入退院基準などについて、科学的知見の集約を急ぎ、対応を検討します。
予防・検査・早期治療の強化も重要です。
ワクチンについては、医療関係者、高齢者3100万人を対象とする3回目接種の前倒しについて、ペースアップさせます。
3月以降は、追加確保した1800万人分のワクチンを活用し、高齢者の接種を6カ月間隔で行うとともに、5500万人の一般向け接種も、少なくとも7カ月、余力のある自治体では6カ月で接種を行います。
国としても、自衛隊による大規模接種会場を設置し、自治体の取り組みを後押しします。
感染拡大が懸念される地域において、予約なしでの無料検査を拡充します。
メルク社の経口薬160万人分について、既に全国2万2千の医療機関・薬局が登録し、医療現場に、3万人分をお届けしています。
作用の仕組みが異なるファイザー社の経口薬についても、月内に200万人分の購入に最終合意し、来月できるだけ早くの実用化を目指します。
オミクロン株は、お子さんの感染も多く見られます。これまでワクチンの接種対象ではなかった12歳未満の子供についても、希望者ができるだけ早く、ワクチン接種を受けられるよう、手続きを進めます。
保健所について、体制の強化、科学的根拠に基づく業務の合理化、保健所に頼らない地域の重層的ネットワークの整備を進め、必要な即応体制を確保します。
感染を抑えるためだけでなく、BCP(事業継続計画)遂行、社会活動維持のために、テレワークを積極的に活用していただくようお願いいたします。
学校においても、休校時のオンライン授業の準備を進めます。入試については、追試などにより受験機会を確保するとともに、4月以降の入学を可とするなど、柔軟な対応を要請します。
米国は、必要不可欠な場合以外の外出を認めない、夜間の外出を禁止するなど、在日米軍の感染拡大防止措置を発表しました。在日米軍の駐留に関わる保健・衛生上の課題に関し、地位協定に基づく日米合同委員会において、しっかり議論していきます。
(息の長い感染症対応体制強化)
息の長い感染症対応体制の強化策として、まずは、安全性の確認を前提に、迅速に薬事承認を行う仕組みを創設します。
さらに、これまでの対応を客観的に評価し、次の感染症危機に備えて、本年6月をめどに、危機に迅速・的確に対応するための司令塔機能の強化や、感染症法の在り方、保健医療体制の確保など、中長期的観点から必要な対応を取りまとめます。