平安時代初期に成立したとされ、日本最古の物語と伝わる「竹取物語」。誰もが知るこのストーリーを滋賀県立びわ湖ホール(大津市)の沼尻竜典芸術監督がオペラに仕立てた「歌劇 竹取物語」が今月下旬、7年ぶりに同ホールで上演される。幻想的な演出や平安装束を思わせる華麗な衣装が彩る舞台は絵巻物のよう。美しく、しなやかに主役のかぐや姫を演じる幸田浩子さんに作品の見どころなどを聞いた。
子供から大人まで
「歌劇 竹取物語」は沼尻氏が原作を読み解き、忠実に台本化したもの。前衛的な音楽は用いられず、親しみやすいメロディーでつづられており、沼尻氏は「(自身が)子供のころ慣れ親しんだ昭和の歌謡曲のスタイルを意識して作曲した」と解説。〝お堅い〟イメージのあるこれまでのオペラとは違い、子供から大人まで楽しめる作品となっている。
平成26年に「横浜みなとみらいホール」(横浜市)で演奏会形式で初演を迎え、27年にはベトナムの「ハノイオペラハウス」で日越合同キャストで舞台上演。同年夏には、びわ湖ホールで公演があり、中ホール2公演とも瞬く間にチケットが完売するほどの人気で、令和2年に再演が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で中止となった。
ゼロから生み出す
主役を務める幸田さんは澄み切った美声にファンが多い日本を代表するソプラノ歌手。初演からかぐや姫を演じており、同ホールでの再演について「また上演しようと思ってくださったのはありがたい」と喜ぶ。
幸田さんはこれまでに各国の著名な劇場で重要な役を演じてきた。だが、長い歴史の中で数々の名優が歌い上げてきた既存のオペラとは異なり、今回の竹取物語は生まれたばかりの日本のオペラだ。そのため、「かぐや姫はどのような人物で、どんな歌い方をするのか」といった役のイメージを一から沼尻氏らと一緒に作り上げていったという。