中国国家統計局が17日発表した2021年の実質国内総生産(GDP)は前年比では8・1%増となったものの、10~12月期については鈍化を見せた。習近平政権が進める不動産やIT、教育といった民間企業に対する締め付け強化も響いた。新型コロナウイルスのわずかな感染拡大も許さない「ゼロコロナ政策」など、22年の中国経済をめぐってはリスク要因が目立つ。(北京 三塚聖平)
1月上旬、学習塾が集中的に入居していることで有名だった北京市海淀(かいでん)区のビルを訪れると、その一角には工事用の高いフェンスがあった。昨年夏まで多くの子供が必死に勉強をしていたという室内をフェンスの脇からのぞくと、既に撤去作業が行われた後で、建築資材が乱雑に積み上げられていた。
中国共産党と政府は昨年7月、子供の過度な学習負担を軽減するための通達を出した。宿題と塾通いを減らす「双減」政策といわれるもので、この中で既存の学習塾は非営利組織化させることを求めた。習政権は教育負担を軽減させることで、深刻化している少子化に歯止めを掛けることを狙うが、これにより学習塾の倒産や人員整理が一気に広がり、業界の代表格である「新東方」は21年に6万人を解雇したと伝えられる。
影響は広範囲に及ぶ。名門大学が集まる海淀区では双減政策を受けてマンション価格が急落した。子供の進学のためにマンションを購入する人が後を絶たず、全国トップクラスの高価格物件が集まる地域として知られていたが、同区の不動産仲介会社で働く張さんは「昨年夏から4カ月くらいは市場が完全に凍り、ピーク時には取引価格が20%は下がった」とため息をつく。
こうした混乱を伴う改革は教育分野にとどまらない。中国政府は、庶民の不満が大きい不動産バブルの抑制策を進めているが、これにより中国恒大(こうだい)集団など不動産大手の経営や販売状況が苦しくなった。北京の外資系企業幹部は「中国経済に構造改革が必要なのは理解できるが、予見性に欠けるため懸念材料になっている」と指摘する。
22年の中国経済をめぐって注視されるのが中国のゼロコロナ政策だ。いったん感染者が確認されれば厳格な移動制限措置をとり、徹底的に流行を押さえ込むことが習政権の看板政策になっている。ただ、昨年12月からロックダウン(都市封鎖)が続く中国陝西(せんせい)省西安市では、医療体制の混乱や食料不足など市民の厳しい生活が伝えられている。消費の足かせになっているとも指摘される。
中国では現在、感染力が強い新変異株「オミクロン株」の感染が北京や上海など大都市でもじわじわと拡大しているが、大規模な封鎖措置がとられるようなことになれば世界のサプライチェーン(供給網)も混乱させかねない。