調整期間がいらない⁉ 筑波大がスケート靴開発 フィギュア宇野も協力 

宇野昌磨の好調の要因は、足元にもある
宇野昌磨の好調の要因は、足元にもある

フィギュアスケートにおいて、重要な道具となるスケート靴。トップ選手は、数カ月に1度ほど新調するが、自身の足に慣れるまで1~2週間を要するなど靴の調整に苦心するケースが多い。筑波大では、そんな悩みを解決しようと、「調整期間のいらない」スケート靴の開発を進めている。短時間で足にフィットするようになり、試着した選手からは練習がより充実するとの声も上がる。

「今年、一番よくなった要因は靴ですね」

フィギュア男子で北京冬季五輪代表の宇野昌磨(トヨタ自動車)は、今季のグランプリシリーズ第4戦、NHK杯を制した後、こう語った。これまでは壊れにくいとされる硬い素材の靴を履いていたが、今季の開幕前にさまざまな種類の靴を試し、柔らかいものに変更した。自身の足にフィットする靴が見つかったことで、充実した練習を積むことができているという。

筑波大開発の靴は、メーンの素材にFRPを採用。足にフィットしやすい
筑波大開発の靴は、メーンの素材にFRPを採用。足にフィットしやすい

4回転ジャンプなどの大技を連発するトップ選手は、靴への衝撃が大きい。そのため、シーズンを通じて1つの靴を履き続けることはあまりない。宇野も同様で、これまでは約3週間ごとに変えてきた。

靴が足になじむまでは時間がかかる。おろしたての際には、高難度ジャンプを試すどころではなく、宇野は「1週間か2週間は調子を戻すことに時間を費やさないといけない」と説明する。一進一退を繰り返し、「ここ1~2年は、ちゃんと自分の練習を積めていなかった」と振り返る。トップ選手でさえ、靴の調整に頭を悩ませる現状がある。

そんな状況に一石を投じようと、筑波大スポーツR&Dコアの武田理研究員と鈴木啓太研究員らが、調整期間が短期間ですむスケート靴の開発を進めている。2013年からスポーツ庁の委託事業と日本スポーツ振興センターの再委託事業として、日本スケート連盟とともに開始。試行錯誤を繰り返した末、「ほぼ完成形」(武田氏)のものが出来上がった。

開発にあたって宇野らに試してもらったところ、履いてからわずか数十分で4回転ジャンプが跳べるほどだった。通常は最低でも1週間はかかるだけに、破格の短さを実現。他にも、「履き心地が神」と絶賛するトップ選手もおり、日本スケート連盟からも高評価だったという。

従来のスケート靴と大きく異なるのは、使用している素材だ。一般には革を使ったものが多いが、同大開発の靴は、軽くて強度のある「繊維強化プラスチック(FRP)」をメインの素材に採用した。FRPは、陸上の棒高跳びのポールなどに使われており、しなやかさに優れている。

また、製作過程では、3Dプリンターを活用するなど人の手の介入を減らした。同大では、FRPという素材に加え、製品ごとの個体差を最小限に抑えられていることが、足へのなじみやすさにつながっていると分析している。靴の軽量化にも成功し、従来比約25%減になった。

ただ、同大が開発中の靴は、まだ商品化には至っていない。今後、一般のスケーターらにもいきわたるよう量産化を目指したいという。鈴木氏は「研究の知見はたまってきている。一緒にやってくれるシューズメーカーが現れてくれれば、一般の人にも成果を届けられるはず」と話している。(運動部 久保まりな)

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