学芸万華鏡

ついに地球を飛び出した! コロナ禍で相次ぐ妄想旅行ガイドブックの魅力

妄想旅行が楽しめそうなガイドブックが続々と出版されている
妄想旅行が楽しめそうなガイドブックが続々と出版されている

宇宙、異世界、漫画…。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う旅行の自粛で逆風にさらされる旅行ガイドブック。だが、妄想旅行が楽しめるような工夫を凝らした内容を打ち出し、話題を呼んでいる。旅を再開したときに現地での感じ方、楽しみ方も広がりそうだ。

図鑑に活路

旅行ガイドブックとして40年以上の歴史がある「地球の歩き方」。初の緊急事態宣言中の令和2年4月の売り上げは前年同月比9割減に。厳しい状況で見いだした活路が「図鑑」だ。

海外取材もストップしたなかで一昨年7月に発売したのが、「世界244の国と地域」。人口や宗教などのデータに加え、「チュッパチャプスはスペイン生まれ」など雑学も盛りこんだ。東京五輪の開会式の時に手にとってもらおうと企画していた本で、五輪は延期になったものの売れ行きが好調だった。宮田崇編集長は「これまでの取材で、載せられないけれどおもしろいネタがたくさんあった。旅に行けなくてもこのシリーズなら売れると考え、旅の図鑑としてシリーズ化した」と明かす。

今年1月発売の「世界遺産 絶景でめぐる自然遺産完全版」も含めてシリーズは12冊。累計発行部数は15万部を超えた。「世界のグルメ図鑑」では、本場の味を日本で体験できるレストランを紹介。「世界のすごい巨像」では「巨像から見る世界の歴史」「巨像巡りで世界一周!」などの読み物が充実。「世界197ヵ国のふしぎな聖地&パワースポット」では、宗教人類学者の植島啓司さんに、聖地とはどんなところかインタビュー。人気コラムニストでスピリチュアル系の著作も多い辛酸なめ子さんがパワースポット巡りを語った記事も掲載した。

「渡航者が多い地域だけでなくマイナーな地域も扱ってきたのが歩き方。聖地や巨像などは編集者ものびのび作りました」と宮田編集長は言う。

昨年8月には、「『地球の歩き方』が本気で生き残ろうとしている。」というツイートがバズり、SNSで話題に。老舗ガイドブックの新たな挑戦は好意的に受け止められた。「過去の旅を振り返る人もいる。旅行に行くことができないからこそ、書籍を通して世界の知識を得ようとするニーズがある」と宮田編集長は話す。

「ムー」世界も堪能

2月にはついに、異世界旅行のガイドブックが登場する。ミステリー雑誌「ムー」とコラボして、「地球の歩き方ムー 異世界(パラレルワールド)の歩き方」を発売する。表紙には、「超古代文明」「聖地」や未確認生物を意味する「UMA」の文字。ピラミッドなどの古代遺跡やUFO出没地点などを、歩き方的視点とムー的視点から解説する異色のガイドブックだ。

「地球の歩き方ムー 異世界(パラレルワールド)の歩き方」が2月に発売される
「地球の歩き方ムー 異世界(パラレルワールド)の歩き方」が2月に発売される

たとえば、エジプト・ギザの3大ピラミッドの記事では、歩き方側は、紀元前2500年ごろに当時の王たちによってつくられたといった説明だが、ムー側は、「エジプト文明のルーツは火星?」として、火星探査機からの映像で大小のピラミッドが映っていたことを紹介する。

「目指したのは宝さがし気分が味わえるガイドブック」だ。サンタクロースや妖精、カッパなども紹介。幻の大陸やUFO出没スポットまで掲載した地図など遊び心満載で、想像力が刺激される。担当プロデューサーの池田祐子さんは「不思議なスポットを網羅するだけでなく、定番のスポットでも『これは知らなかった』というようなネタを詰め込みました」。

地球の歩き方ムーの発売が発表されるとSNSを中心に反響は大きく、今まで発行してきたガイドブックでは考えられないほど、書店からのキャンペーンの相談や事前注文があったという。「非日常を楽しめるのが旅の醍醐味(だいごみ)。今回のコラボのように、これからのガイドブックはもっと自由でいいのかなと思います」と池田さんは言う。

キン肉マンも登場

「ついに宇宙に進出」と話題を集めたのが、昨年3月に出版された、JTBパブリッシングの「るるぶ宇宙」だ。宇宙開発と宇宙旅行の最新事情を取り上げ、表紙には「妄想Trip 脱・地球!」の文字が躍る。

国際宇宙ステーション(ISS)への旅をダイジェストで紹介し、宇宙食やISSでの過ごし方も掲載。JAXA筑波宇宙センターなど日本の宇宙スポットも盛り込んだ。監修に専門家を迎える一方、従来の旅行ガイドとしてのレイアウトを踏襲し、気軽に読める点も好評だ。宇宙旅行をした実業家の前沢友作さんがツイッターで紹介し、話題にもなった。

漫画とのコラボも活発だ。昨春に出版された『るるぶONE PIECE』は発売前に増刷。人気漫画、ワンピースに登場する場所とよく似たスポットを紹介。漫画のシーンと見比べることができ、ワンピースの雰囲気が味わえる場所を巡る旅のプランも提案する。「通常のガイドにはないスポットの幅広さが特徴です。ワンピース好きならわくわくするはず」と担当者。

昨年11月発売の『るるぶキン肉マン』では、登場する超人たちの戦いの舞台を案内。作者のゆでたまごさんに、戦いの舞台に設定した理由を聞いたインタビューも掲載した、濃い内容だ。

田村知子編集長は「作品の世界観を壊さないように作りました。旅行好きな人はもちろん、そうでない人にも旅のきっかけ作りになれば」と話している。

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