主張

東大前無差別刺傷 被害者の救済を最優先に

大学入学共通テスト会場の東京大学農学部正門前の路上で、受験生の男女の高校生と72歳の男性が、17歳の少年に突然、刃物で背中を刺された。なんとも痛ましい事件である。

少年は名古屋市の高校2年生で、被害者らとの面識はなく、警視庁の調べに「勉強がうまくいかず、事件を起こして死のうと思った」などと供述しているという。それが真の動機であるなら、あまりに身勝手であり、同情の余地は全くない。

事件を受けて大学入試センターは共通テストの実施会場になっている全大学に警備体制強化を要請する通知を出した。会場入り口での受験票提示、受験に関係ない人物を会場に入れない、試験前日の会場点検などを求めたものだが、実際の事件は敷地外で起きた。

昨年10月のハロウィーン当日には、京王線特急電車内で男が面識のない男性の胸をサバイバルナイフで刺し、車内に火をつけた。昨年末には大阪市内のクリニックで男が放火し、多くの人が亡くなった。いやな事件が続いているが、こうした無差別対象の凶行を未然に防ぐことは極めて難しい。

事件の背景を探ることも大事だが、まずなすべきは、被害に遭った受験生2人の不利益を、万難を排して取り除くことだ。

共通テストの本試験は15、16日に実施されるが、けがや疾病の影響で受験できなかった場合、29、30日に追試験が予定されている。いずれも重くはないとされる被害者の受験生にも適用される見通しだが、たとえけがが軽かったとしても、精神的な負担も含め、容体を慎重に見守ってほしい。

文部科学省は新型コロナウイルスの感染拡大を念頭に、追試験も受けられなかった受験生には、2次試験など個別試験だけで合否判定するよう、各大学に要請している。事実上、共通テストの免除を認める特例措置だ。

末松信介文科相は「被害者2人の意向を踏まえて今後の対応を検討する」と述べ、特例措置の適用も「選択肢の一つ」とした。まさかこれを、「不公平」と受け取る人はいないだろう。

肝心なのは、文科省は卑劣な事件による受験生の理不尽な不利益を決して見逃さない―という姿勢を明確にみせることだ。

それが他の受験生の安心にもつながるはずである。

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