【北京=三塚聖平、ソウル=桜井紀雄】中朝貿易関係者によると、北朝鮮を出発した貨物列車が16日午前、中国側に到着した。北朝鮮は中国での新型コロナウイルスの流行後、国境の封鎖を続けてきた。中朝間で貨物列車の運行が確認されるのは、2020年夏以降約1年半ぶりとみられる。今回の運行が陸路貿易の本格的再開につながるか、一時的措置なのかは不明だ。
列車は、北朝鮮・新義州(シニジュ)とつながる中朝友誼橋を渡り、中国側の遼寧省丹東市に入った。中国の北朝鮮筋は、貨物列車には何も積まれておらず、中国側で住宅建設資材などを積み込み北朝鮮に戻る見通しだと説明した。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は平壌に25年まで毎年、住宅を1万戸ずつ新設する計画を示し、昨春、着工式に出席したが、国境封鎖で資材輸入が滞っていた。
北朝鮮筋は「他の物資については許可が出ていない」としている。一方、中朝貿易関係者は「北朝鮮側から新規の注文が入っている」と指摘し、丹東では本格的な陸路貿易再開へ期待が広がっている。
韓国の聨合ニュースは、今後、北朝鮮から毎日、10~20両編成の貨物列車が中国に入り、物資を積んで戻るとの見通しを伝えた。
中朝貿易は、北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源を絶つため国連安全保障理事会が17年に採択した制裁決議を受け、18年に大きく落ち込んだ。さらに、北朝鮮が新型コロナの防疫対策として20年1月に国境を封鎖。丹東-新義州間の貨物列車の運行はその後も断続的に行われたもようだが、同年夏からは停止していたとみられる。北京の外交筋は「この2年間、中朝貿易はほぼ途絶えたような状態」と指摘する。
金氏は昨年末の労働党中央委員会総会で防疫の徹底を指示する一方、農業振興策に演説の多くを割いた。国境封鎖は経済に深刻な打撃を与えており、肥料など必要最低限の物資の輸入は昨年から海上交易の一部を再開させ、しのいできたのが実情だ。北朝鮮経済の〝動脈〟といえる中国との陸路貿易が本格的に再開されるのか注目される。