五月雨式の変更で文科省に不信 大学入学共通テスト

英語・リスニングの試験に臨む受験生=15日午後、東京都文京区の東大(代表撮影)
英語・リスニングの試験に臨む受験生=15日午後、東京都文京区の東大(代表撮影)

2年目の大学入学共通テストが15日、始まった。共通テストをめぐっては文部科学省が昨年、大学入試センター試験からの大きな変更点としていた英語民間試験と記述式問題の導入を正式に断念し、見込みの甘さを露呈。今回は本番直前に新型コロナウイルス対応として五月雨式にルールを変更するなど、受験生に不安を与え続ける文科省への不信感がくすぶっている。(大泉晋之助)

入試改革の両輪に位置づけられていたはずの民間試験と記述式。だが、民間試験は受験生の居住地や経済力によって受験機会の格差が生じ、記述式は短期間で大量の答案を正確に採点する困難さがあると指摘されていた。

こうした課題を踏まえ、文科省は令和元年11月に実施見送りを決定。その後も導入にこだわった文科省だったが、昨夏、正式に断念し、英語や記述のスキルを問う設問は、国公私立大の個別入試での充実を求めることとした。共通テストで「思考力や表現力を問う」という理念に執着した文科省。しかし、その議論に翻弄された受験生や学校現場からの批判は根強い。

新型コロナ対策として打ち出した方針も入試への不信感に拍車をかけている。

文科省は昨年末、オミクロン株感染者の濃厚接触者に関しては無症状でも受験を認めないとする対応を公表したが、批判が集まり早々に撤回に追い込まれた。

今年に入ると、新型コロナを理由に共通テストを受けられなくなった受験生について、個別試験のみで合否判定を可能にするよう全国の国公私立大に要請。「最大限のセーフティーネット」(末松信介文科相)を考慮したとしているが、予定通り共通テストを受けた場合との「不公平感」を指摘する声は多い。

人材育成の場として社会から期待される大学への橋渡しを担う受験制度に対する信頼が揺らげば、日本の教育システムそのものがおぼつかなくなる。有事対応も踏まえたより洗練された受験制度を構築する責務があることを、文科省は認識する必要がある。

入試関連ニュース

入試コラム