話の肖像画

真矢ミキ(14)なりきって射止めた「沖田管理官」役

映画「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインポーブリッジを封鎖せよ!」の製作発表会見で=平成15年3月
映画「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインポーブリッジを封鎖せよ!」の製作発表会見で=平成15年3月

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《「事件は現場で起きているんじゃない、会議室で起きているのよ!」―。平成15年公開の映画「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(本広克行監督)で、真矢さん演じる警察官僚、沖田管理官が、部下の所轄刑事、青島(織田裕二さん)に言い放ったこのせりふは、映画の大ヒットとも相まって強烈な印象を残した》


当時は分からなかったけれど、今だから思うのは沖田という役は、あの時代の男性から見た〝キャリア女性の象徴〟だったと思います。女性として反論したい部分もありますし、当時の事務所社長も、悪役だから沖田を私にやらせたくなかったのではなく、「女性官僚で出世するヤツは、性格が悪い」というような決めつけが、気になったのだと思います。

でも私にしてみれば、40歳手前で女優として崖っぷちですから、とにかく世に出ることが最優先。これを逃したら、オーディションを受けることすら難しくなると決死の覚悟です。選考には「普段着で可」とありましたが、私は友人からリクルートスーツを借り、頭を夜会巻きにし、ピンヒールを履いて、私のイメージする沖田になりきって臨みました。


《沖田役のオーディションは本番さながらのカメラテストもあり、感触は良かった。ただ役を射止めた後、スタッフから告げられた「今回、無名の人でいきたかった」という選考理由は胸に突き刺さった》


宝塚の元トップスターと言っても、ご存じない方は全くご存じないです。それは当たり前のことなのに、当時は「私って無名なんだ…」と呆然(ぼうぜん)としました。でもこの土壇場で、今更つまらないプライドにすがりついている方がよほど、格好悪いとすぐ思い直しましたが。

後から伺ったら、私は別にオーディションでの演技が認められたわけではなく、「会場にあなたが入ってきた途端、沖田そのものだった」と。要するに役のイメージだったから、選ばれたと聞きました。


《真矢さんはもともと「踊る大捜査線―」のシリーズは、テレビも映画も見ていた。背水の陣でチャンスをつかみ、作品に少しでも貢献できるよう、日常生活でも役作りに没頭した》


宝塚時代、男役として身長を高く見せるヒールは履きましたが、ピンヒールは履いてこなかったので、体になじませるため、日常的に家の中でも履いて生活しました。台本のト書きに、「沖田が階段の上からカツカツと音を立てながら下りてきて、ピンヒールが光る」という象徴的な記述があって、役の重要な要素だと思ったからです。

でも重心が前のめりになるし、もう脱いだときの解放感といったらない。あの時ほど、OLの方たちのご苦労を思ったことはないです。ただ、今よりずっと男社会だった時代ですから、ピンヒールにタイトスカートという外見にこだわる沖田は、むしろ「私は女性ですから」とのし上がる道具として、それらを使っていたのでは、と推察していました。ピンヒールを、歩きやすいスニーカーに替える時代でもなかったと思いますし。

撮影前、沖田の気持ちになってピンヒールを履き、品川や田町のオフィス街を速足で歩くと、ビジネスマンの大群の中で、孤軍奮闘する沖田の葛藤に、少し近づけた気がしました。


《映画は同年、国内劇場公開映画の興行収入第1位を記録する大ヒット。真矢さんの知名度も一気に上がった》(聞き手 飯塚友子)

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