電力小売り事業者に淘汰の波

日本卸電力取引所(JEPX)でのスポット価格が高止まりしている。国内の発電量の4割を占めるガス火力発電所で燃料となる液化天然ガス(LNG)価格の上昇をはじめ要因は複合的だ。記録的な高値をつけた昨冬と同様、電力小売り事業者には厳しい経営環境だ。欧州も事情は同じで、英国では昨夏以降、事業者の経営破綻が相次ぎ、社会的混乱が生じた。この状況は日本にとって対岸の火事ではなく、長崎県など各地で問題が表面化している。

記者会見する電気事業連合会の池辺和弘会長
記者会見する電気事業連合会の池辺和弘会長

「契約を解除させてもらいたい」

昨年11月、長崎県庁に地元新電力からこのような申し出があった。この新電力は今年度に県庁知事部局と県警施設の電力を競争入札で落札し、供給を続けてきた。ただ、電源が十分に確保できず、さらにJEPXのスポット価格が上昇する中、県との契約が「収支を圧迫することが見込まれた」(同社担当者)ため、中途解約を申し入れた。

この新電力の読みは当たった。JEPXのスポット価格は、昨年11月以降高止まりしており、1キロワット時あたりの24時間平均が30円を超える日もある。LNG不足や発電所トラブルが重なり、スポット価格が高騰した昨冬の水準にまでは至らないものの、令和元年度と比べれば2~3倍近い高値だ。

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電力などエネルギー価格の高騰や、それに伴う混乱は日本だけが直面する問題ではない。

英国では昨年、電力供給の約4分の1を占める風力発電の発電量が風況の悪化で大幅に下がった。不足を補う天然ガス火力発電の増加に伴うコスト増などが直撃し、昨年9月には電力市場で1メガワット時あたり約2500ポンド(1キロワット時あたり約390円)にまで上昇する時間帯が生じた。一方で、販売価格には上限が定められており、逆ザヤを吸収できない事業者が、次々に破綻した。

そうした状況を受け、昨年12月、英国電力ガス市場規制局(Ofgem)は「エネルギー市場のレジリエンスの構築」と題した文書を公表。文書では、英国で同月15日までに28事業者が破綻したことを挙げ「エネルギー価格の急騰という経済的なショックに耐えられなかった」と断じた。

英国当局も決して無策だったわけではない。参入基準の厳格化を進め、2016年からの3年間で35社あった新規事業者は19年に8社、20年に2社に減少した。それでも「事業者の多くに本来あるべき(財務的な)堅固さがない」と認めざるを得なかった。

Ofgemは今年1月以降、事業者が危機に十分対応できる財務力を持つかなどについて「ストレステスト」を実施する方針を打ち出した。規制強化と消費者保護をさらに進めるのが狙いだ。