密着警視庁

(3)音楽隊 治安に貢献する「音の懸け橋」

合奏練習を行う音楽隊の隊員。右端は根本和哉記者=令和3年12月10日(大渡美咲撮影)
合奏練習を行う音楽隊の隊員。右端は根本和哉記者=令和3年12月10日(大渡美咲撮影)

警視庁本部17階にある大合奏室の扉を開けると、自主練習中の各隊員による管楽器や打楽器の美しい音色がこだましていた。真剣な表情で楽譜と向き合い、楽器を鳴らすさまは、プロの楽団員そのものだ。

警視庁の仕事は都民からの理解と信頼なくしては成り立たない。演奏活動を通じ、警察と都民との「音の懸け橋」として活動しているのが警視庁音楽隊だ。隊長、副隊長を除く演奏者44人が約15のパートに分かれて活動し、新型コロナウイルス禍以前の年間公演数は約150にも上る。

昨年12月上旬、記者は合奏の練習に参加させてもらう機会を得た。学生時代にジャズバンドでベースを弾いていた経験がある。自分のベースを持ち込み、コントラバスは音楽隊のものを借りて、大合奏室で練習の開始を待った。

高い要求着実に改善

指揮を担当する佐藤親悟隊長(54)が入室すると、一気に空気が張り詰めた。

都内の小学校で行われるクリスマスコンサート向けの練習で、1曲目は星野源の「ドラえもん」。記者は自宅で予習をしていたが、ついていくだけで精いっぱいで、ミスも繰り返した。一方、隊員らの演奏はリズム、音程ともに全くぶれがない。40人以上が同時に音を出しているにも関わらず、全員の音がかっちりとかみ合い、滑らかな演奏に舌を巻いた。

「子供たちが聞くんだから、もっと軽やかに」

演奏後、佐藤隊長から指示が飛んだ。一緒に演奏していて全く気にならなかった部分で、音へのこだわりは深い。記者も軽やかな演奏を意識し、隊員とともに指摘された部分を何度も繰り返す。

「8小節目のクラリネットの音が少し伸びすぎだ」

高い要求に隊員らはその都度応え、着実に改善していく。

憧れてくれれば…

合奏で一貫していたのは「聴く人をいかに楽しませるか」だ。共にベースを演奏した木村卓也巡査長(36)は「音楽隊の仕事は警察に親しみを持ってもらうこと。上手な演奏はもちろん、楽しんでもらうことを大切にしている」と話す。

演奏曲は吹奏楽やクラシック以外にも、ポップスからアニメソング、演歌まで幅広く、聴衆に合わせた選曲を行う。旗を用いた演技を行うカラーガード隊とも連携し、見ても聴いても楽しい演奏を追求する。

「アップテンポの曲では体を揺らしたり、楽しそうな表情をしたりしてお客さんにアピールしている」と木村巡査長。音符を追うのに必死だった記者には、そんな余裕はなかった。

佐藤隊長は「演奏を聴いた子供たちが警察官に憧れてくれれば、悪いことはしなくなる」と力を込める。現場の最前線に立たなくとも、音楽隊の演奏活動は都の治安を守ることに貢献している。

「演奏を聴いて『感動した』と言ってもらえることがやりがい。多くの人に、警察や音楽隊のことを知ってもらいたい」と木村巡査長。これからも、力強く優しい音楽で、都民の暮らしを守ってくれるはずだ。

(根本和哉)

記者メモ 清く澄んだ管楽器の旋律も、力強く鳴り響く打楽器の音色も、新聞では伝えられないのがもどかしい。

記者も楽器を弾くだけに、これほどの演奏をするにはとてつもないほどの努力が必要なことが分かる。通常の警察業務をこなしながら、配属目指して修練を積み、配属後も一日中楽器と向き合い続ける、隊員の音楽へかける思いに深く感動を覚えた。

ぜひ一度、音楽隊のコンサートへ足を運んでいただきたい。日々の暮らしを守ってくれている警察官が、より身近に感じられること間違いなしだ。

警視庁音楽隊 昭和23年設立。警視庁主催イベントのほか、毎週の「水曜コンサート」、世界各国の警察音楽隊が集う「世界のお巡りさんコンサート」など、さまざまな機会で演奏を披露している。天皇陛下のご即位に伴い行われた「祝賀御列の儀」での演奏など、首都の警察音楽隊ならではの仕事もある。

隊長以外の隊員の身分は全員警察官で、警察学校を卒業してから各警察署での勤務を経験している。入隊を希望しても、演奏の実力とタイミングがそろわなければ配属されないという狭き門でもある。