主張

韓国の公捜処 権力の私物化は許されぬ

これでも民主主義国といえるのだろうか。

韓国で、報道の自由が脅かされる事態がまたもや発覚した。

「検察改革の柱」として文在寅政権が1年前に発足させた捜査機関「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」が、日本メディアを含む多数の記者や野党議員の通信情報を照会していた。

韓国では、公捜処を含む捜査機関が捜査対象の通話相手を知るため、通信会社に対し、裁判所の許可なしに電話番号から使用者の氏名や住所、住民登録番号などを照会することができる。

公捜処は照会の理由を「裁判や捜査、刑の執行、国家安全保障に対する危害を防止するため」としているが、十分な説明になっていない。公捜処が照会した日本メディアを含む報道機関が、理由に挙げたような危害を企(たくら)んでいるとでもいうのであろうか。あからさまな報道への圧力ではないか。

報道機関には取材源を保護する義務がある。公捜処は、報道の自由を脅かすこれらの行為をただちにやめるべきだ。

韓国メディアによると、公捜処の照会を受けた記者は160人以上だ。朝日新聞や毎日新聞、民放テレビ局などが自社の韓国人記者らが対象になったとした。韓国人記者登録をしていない産経新聞への照会は確認されなかった。

メディア以外では保守系最大野党「国民の力」の国会議員や同党の大統領選候補、尹錫悦前検事総長も照会の主な対象となった。照会がメディアや野党関係者に集中しているのは、公捜処が「文政権のための捜査機関」の性格を帯びていることを示していよう。

公捜処は検察に代わり、政府高官や国会議員、検事らの不正を捜査する。新たな捜査機関の設立は野党も含めた国民的合意が必要なはずだが、与党の強行採決で創設が決まった。文氏ら現政権幹部が退任後も含めて訴追から免れるためと指摘されている。

実際、公捜処トップの金鎮煜処長は文氏による任命だ。中立性に疑念が出るのは当然だ。国民の力は「無差別な民間人査察だ」として金処長の辞任を求めている。中道系野党「国民の党」も廃止を主張している。

捜査権限など刑事権力は国民から負託されたものだ。民主主義を傷つける権力の私物化は許されないことを文政権は知るべきだ。

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