春高バレー

心を打った86本のスパイク 共栄学園、堤亜里菜「全部持ってきていい」

【古川学園-共栄学園】第1セット、スパイクを放つ共栄学園の堤亜里菜(4)=7日、東京体育館(甘利慈撮影)
【古川学園-共栄学園】第1セット、スパイクを放つ共栄学園の堤亜里菜(4)=7日、東京体育館(甘利慈撮影)

「ジャパネット杯 春の高校バレー」として行われた第74回全日本バレーボール高等学校選手権大会(産経新聞社など主催)は9日に閉幕し、男子は日本航空が山梨県勢初優勝、女子は就実(岡山)が2連覇を達成した。女子で印象深かったのが準々決勝の古川学園(宮城)-共栄学園(東京)。共栄学園のエース堤亜里菜(3年)にトスの大半が集まった一戦は美しくもあり、痛々しくも映った激闘だった。

2大会前の準決勝でも戦った強豪同士の再戦は、少し異様な展開だった。ドミニカ共和国からの留学生で195センチのタピア・アロンドラ(2年)を軸としつつ、エースの鈴木玲香(3年)らも得点を決める古川学園に対し、共栄学園は序盤から打数の多かった堤にトスが徐々に集中。第2セット終盤は堤のバックアタックが何本も続いた。最終セットもその傾向は変わらず、的を絞ったブロックで堤を迎え撃った古川学園が25-15で圧倒して制した。

報道陣に公式記録が提供されるのは準決勝以降のため、正式なものではないが、試合映像から堤の打数を数えると、フェイントや利き手とは逆の左手で押し込んだものを含め、1人で計86本を放っていた。比較のため、就実(岡山)-古川学園の決勝の公式記録を見ると、スパイクの最多打数は古川学園がタピアの84本、就実が深沢めぐみ(3年)の74本。ただし決勝は5セットマッチで、就実が3-1で制したため、計4セット行われている。同様に古川学園が下北沢成徳(東京)を3-1で破った準決勝の最多打数はタピアの64本。就実が3-0で金蘭会(大阪)を下したもう1試合は、金蘭会の吉武美佳(3年)の50本が最多だった。第2セットが31-29にもつれたとはいえ、準々決勝が3セットマッチだったことを踏まえれば、堤の86本は極端に多かった。

伏線はあった。共栄学園は本来は堤の対角に入る扇谷光憂(みう)(3年)が開幕前日に足を捻挫し、万全とはほど遠い状態。実際、古川学園戦では最終セット終盤に投入されるのみだった。攻撃の重要な駒を欠いた上に、最高到達点315センチのタピアが核となる相手ブロックは高く、堤以外のスパイクはなかなか決まらなかった。

堤とは中学から同僚のセッター永井いづみ(3年)は、3回戦までは前衛2人がそろって速攻を打つ態勢に入る「ダブルクイック」を効果的に使うなど、チームが掲げる〝マジカルバレー〟を存分に繰り出したが、古川学園戦では攻撃がやや手詰まりになった。厳しくマークされても、なお決め切る力を持った堤に頼りたくなるのは必然で、堤自身も「全部持ってきていいよ」と永井に告げていた。